離婚する際に夫が妻に対して養育費を支払うことを決めていたものの、その後夫が再婚する場合があります。
このような場合、夫は新しい再婚相手に対して扶養義務を負い生活費を負担することになりますが、前妻の子への養育費は減額されることになるのでしょうか。
一度決められた養育費を減額するには、事情の変更が必要です。
再婚をしたとか再婚後に子供をもうけたという事情が、事情の変更に該当するかは、以下のとおり様々なケースが考えられます。
離婚後すぐ(1年以内)に再婚した場合には、離婚時に再婚を予定していたとも考えられ、養育費の減額請求が認められないことがあります。
離婚後一定期間(2年程度)経過した後に再婚した場合には、養育費の減額請求は認められると考えられています。
養育費の減額が認められるとして、いくら減額されるのかは、以下のとおりいろいろな場合で異なります。
なお、以下では夫が前妻に対して養育費を支払っていたが、夫が再婚した、という事例を前提に考えます。
夫の再婚相手との間に子がいない場合、夫としては、再婚相手に対する扶養義務が増えることになります。
この場合、再婚相手に収入があるかないかで個別に考える必要があります。
再婚相手に収入がない場合
再婚相手に収入がない場合、夫は再婚相手に生活費を支払う必要があります。
この場合の生活費の金額は生活費指数をもとに計算しますが、再婚相手の生活費指数は、再婚相手は夫と同居しておりまた教育費を要しないため、15歳未満の子と同じものと考えられます。
そうすると、生活費指数は55として計算することになります。
したがって、夫の前妻らへの養育費分担額は以下で計算します。
夫の分担額=夫の収入×前妻の子の生活費指数/(100+前妻の子の生活費指数+55)×夫の基礎収入/(夫の収入+前妻の収入)
たとえば、夫の収入が400万円、前妻の基礎収入が100万円、夫と前妻の子が15歳未満の子1人だとすると、
養育費は、400×55/(100+55+55)×400/(400+100)÷12=7万円(月額)
になります。
再婚相手に十分な収入がある場合
再婚相手に十分な収入がある場合、夫は再婚相手に生活費を支払う必要がないため、再婚相手への生活費分を控除する必要はありません。
したがって、この場合夫の前妻らへの養育費分担額は以下で計算します。
夫の分担額=夫の収入×前妻の子の生活費指数数/(100+前妻の子の生活費指数)×夫の基礎収入/(夫の収入+前妻の収入)
たとえば、夫の収入が400万円、前妻の基礎収入が100万円、夫と前妻の子が15歳未満の子1人だとすると、
養育費は、400×55/(100+55)×400/(400+100)÷12=9.5万円(月額)
になります。
再婚相手との間に子が生まれた場合、再婚相手だけではなく、再婚相手との子に対しても扶養義務が増えることになります。
この場合も、再婚相手に収入があるかないかで個別に考える必要があります。
再婚相手に収入がない場合
再婚相手に収入がない場合、夫は再婚相手と再婚相手との子に生活費を支払う必要があります。
この場合の生活費の金額は生活費指数をもとに計算しますが、再婚相手の生活費指数は55として計算することは上述のとおりです。
そして、再婚相手との子の生活費指数は、15歳未満の子については55、15歳以上の子の場合は90として計算することになります。
したがって、夫の前妻らへの養育費分担額は以下で計算します。
夫の分担額=夫の収入×前妻の子の生活費指数/(100+前妻の子の生活費指数+55+再婚相手との子の生活費指数)×夫の基礎収入/(夫の収入+前妻の収入)
たとえば、夫の収入が400万円、妻の収入が100万円、前妻との子が15歳未満の子1人、再婚相手との子が15歳未満の子1人だとすると、
養育費は、400×55/(100+55+55+55)×400/(400+100)÷12=5.5万円(月額)
になります。
再婚相手に十分な収入がある場合
再婚相手に十分な収入がある場合、夫は再婚相手に生活費を支払う必要がないため、再婚相手への生活費分を控除する必要はありません。
ただし、再婚相手との子の生活費分を控除することになりますが、どの程度控除するかは見解が分かれています。
再婚相手の子を養子にした場合も、上記の再婚相手との間に子が生まれた場合と同様になります。
再婚相手の子を養子にしない場合は、その子には扶養義務を負わないため、養育費の算定において考慮されません。
仮に再婚相手の連れ子に対して事実上生活費を負担しているなどの事情があったとしても、結論は変わらないと思われます。
離婚する際に夫が妻に対して養育費を支払うことを決めていたものの、その後妻が再婚する場合があります。
妻が再婚した場合、新たな夫が子供を扶養する場合がありますが、養育費は減額されるのでしょうか。
以下のとおり子どもが再婚相手と養子縁組をするかどうかで異なります。
なお、以下では夫が妻に対して養育費を支払っていたが、妻が再婚した、という事例を前提に考えます。
妻が再婚をしたものの、子と再婚相手が養子縁組をしない場合があります。
この場合、再婚相手は、子に対して扶養義務を負いませんので、夫の養育費負担義務にも影響をしません。
したがって、妻が再婚をしても、子が再婚相手と養子縁組をしない場合には、養育費が減額されないのが原則ということができます。
なお、事実上、未成年者が権利者の再婚相手による扶養を受けており、義務者に養育費の負担を求める必要がないような場合には、養育費が減額される場合もありえます。
妻が再婚をし、子と再婚相手が養子縁組をする場合があります。
この場合、再婚相手は子に対して扶養義務を負うとともに、養親の扶養義務は実親に優先すると考えられています。
再婚相手に十分な経済力がある場合には、実親はもはや扶養義務を履行する必要がなく、養育費を支払う必要はないと考えられます。
再婚相手が十分な経済力がない場合には、養親だけで扶養義務を果たすことができないため、実親も扶養義務を履行する必要があります。
それでは、具体的にどのような場合に、実親が扶養義務を負担するかですが、考え方は様々です。
養親世帯の収入が最低生活費を超えているか否かを基準に考える見解や、標準生計費を超えるか否かを基準に考える見解もあります。