養育費を一度協議や審判により定めた場合であっても、その後事情変更があったときには、家庭裁判所に申し立てることにより変更することができます(民法880条)。
事情変更があった場合とは、当初の協議や審判の当時、当事者に予測不能であったことが後に生じた場合をいいます。
子どもの成長過程で、当初の想定とは異なる場合があり、このような場合、養育費の増額が認められる場合もありえます。
以下では、①子が私立高校に進学した場合、➁子が大学進学した場合、③子が大学進学しなかった場合に分けて検討します。
子が私立高校に進学した場合、当初の養育費の定めが公立高校を想定していたとして、養育費の増額を求められることがありえます。
ただ、当初養育費を決めたときに子どもが中学生であり、私立高校に行くことも想定されていた、という場合には、私立高校に進学することも想定して養育費を定めるべきと考えられるため、通常は事情変更とは言い難いと考えられています。
したがって、このような場合には養育費の増額はできません。
一方、子どもが小さいころに養育費を定めた場合には、養育費を定めた時点でどのような高校に行くかを想定することは出来ず、事情変更となる可能性もありえます。
ただし、私立学校の増額分全てを義務者が負担すべきかどうかは、別問題と言えます。
実際には、子が小さいころに養育費を決める場合などは、子の高校進学時のことを想定して、「高校進学時に養育費を改めて協議する」などといった条項を入れておくことも考えられます。
当初の養育費の支払時期を18歳までとしていたにも関わらず、子が大学進学した場合がありえます。
当初において、大学進学を想定していなかったのであれば、養育費の増額が認められる可能性があります。
2022年4月以降は、民法改正により成人年齢が18歳になります。
ただ、平成30年度司法研究の報告においても養育費の請求は20歳までが原則とされました。
そこで、義務者側が大学進学費用の負担に任意に応じればもちろん、そうでない場合にも、当初大学進学を想定していなかったとしても養育費の増額が認められる可能性はありうると考えられます。
当初の養育費の定めを大学進学を想定して22歳と定めており、養育費の金額も大学進学を前提としていたにも関わらず、子が大学進学をしなかった場合がありえます。
このような場合には、当初の想定では、大学進学しないことが予測不能だったのであれば、養育費の減額が認められる可能性があります。
なお、民法の改正により2022年4月以降は成人年齢が18歳になります。
平成30年度司法研究の報告によればこの改正があったことのみをもって、18歳以降の養育費の取消が認められることはありません。