養育費の計算は、通常、義務者(養育費を支払う人)と権利者(養育費を受け取る人)の収入によって決められます。
この収入の算定にあたって、生活保護を受給している場合や、児童手当を受給している場合、これらはどのように考慮されるのでしょうか。
以下では、①生活保護を受給している場合、➁児童手当を受給している場合、③高等学校等就学支援金を受給している場合、④実家から援助を受けている場合、について、解説します。
生活保護費を受給している場合としては、義務者(養育費を支払う人)が受給している場合と、権利者(養育費を受け取る人)が受給している場合があります。
権利者(養育費を受け取る人)が生活保護費を受給している場合には、生活保護の受給は、養育費の算定において考慮されないと考えられています。
これは、生活保護が最低限度の生活を保障するものであり、民法に定める扶養義務者の扶養等に劣後して行われるものとされているからです。
したがって、権利者(養育費を受け取る人)が受け取っている生活保護費は養育費算定ではゼロとして計算します。
義務者(養育費を支払う人)が生活保護を受給している場合には、見解が分かれています。
生活保持義務の考え方からして、生活保護の受給に関しても収入として認定する考え方がある一方、生活保護制度の趣旨から、養育費用の支払義務を免除する考え方も有力です。
したがって、前者の考えによれば、生活保護費も養育費算定では収入として計上することになりますが、後者の考えによれば生活費保護費は養育費算定ではゼロとして計算することになります。
児童手当は、子ども・子育て支援の適切な実施をはかるために保護者に支給される手当です。
また、児童扶養手当とは、父母の一方が生計同一でない児童の福祉のために支給される手当です。
この児童手当と児童扶養手当は、生活保持義務に基づく婚姻費用や養育費とは異なる観点からの公的支給であるため、受給していても、収入には認定されないと考えられています。
ただし、特に義務者(養育費を支払う人)の収入が低い場合などには、考慮すべきという考え方もあります。
高等学校等就学支援金は、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図るための支援金で、この支援金は、直接学校に給付されます。
この高等学校等就学支援金については、私的扶助を補助する性質のものであるため、婚姻費用や養育費の額を定めるにあたって考慮すべきものではないと考えられます(最決平成23年3月17日)。
したがって、高等学校等就学支援金は養育費算定ではゼロとして計算します。
義務者(養育費を支払う人)又は権利者(養育費を受け取る人)が実家から援助を受けている場合があります。
この実家からの援助は、受け取る人の利益を目的とするものであり、養育費として使用されることを予定されていないため、考慮はされません。
したがって、実家からの援助は養育費の額を定めるにあたっては、ゼロとして計算します。