コラム

養育費はいつまで支払う必要があるか

養育費はいつまで支払う必要があるか(2019年12月改定の養育費新算定表対応)

養育費は、子供の生活に要する費用であり、親の子に対する生活保持義務(扶養義務)に基づくものです。
子どもの扶養が必要であるため、養育費が発生するため、扶養が必要でなくなれば、養育費の支払義務はなくなります。
そして、子どもが成人に達した場合には、自分で生計を立てるのが原則ですので、養育費の支払義務は子供が成人に達するまでというのが原則です。

大学に進学している場合

子どもが大学に進学している場合でも、成人に達していれば養育費の支払義務があるとはいえません。
ただし、このような場合に、子供自身が親に対して扶養料を請求することは考えられます。

東京高決平成12年12月5日は、大学に在学する成人した子が、母と離婚した父に対して、大学卒業までの生活費と授業料の一部を扶養料として請求した事案です。
判旨は、「当該子が、卒業すべき年齢時まで、その不足する学費・生活費をどのように調達すべきかについては、その不足する額、不足するに至った経緯、受けることができる奨学金(給与金のみならず貸与金を含む。以下に同じ。)の種類、その金額、支給(貸与)の時期、方法等、いわゆるアルバイトによる収入の有無、見込み、その金額等、奨学団体以外からその学費の貸与を受ける可能性の有無、親の資力、親の当該子の4年制大学進学に関する意向その他の当該子の学業継続に関連する諸般の事情を考慮した上で、その調達の方法ひいては親からの扶養の要否を論ずるべきものであ」る、としました。

したがって、ケースによっては、子供自身が親に対して扶養料の請求をすることもありえます。

病気等により就労できない場合

子どもが成人に達していても病気等により就労ができない場合もありますが、養育費の支払義務があるとはいえません。
このような場合にも、子供自身が親に対して扶養料を請求することは考えられます。

大阪家審平成26年7月18日は、「Bに稼働能力が認められないとしても、成年に達した子については、基本的には自助の原則が妥当すると解されるのであって、既に25歳となったBの扶養義務を誰がどの程度負担するかは、親族間の扶養義務として検討・考慮されるべき問題であるから、Bが無職、無収入であって相手方が事実上Bを扶養している事実のみをもって夫婦間の扶養義務に基づく婚姻費用分担の一部としてBの扶養を考慮するのは相当ではない。」としました。

実務上の取扱い

上記が原則ですが、養育費の調停などでは、杓子定規に20歳や18歳などとしているわけではありません。
もちろん20歳や18歳などとすることもありますが、大学卒業時である22歳などとする例も多く見受けられます。
また、大学に進学した際には大学卒業時まで養育費を支払うが、大学に進学しない場合には20歳や18歳まで、という例もあります。

成人年齢の引き下げ

2022年4月1日には成人年齢が20歳から18歳に引き下げられます。

これに伴い、養育費に関してもいつまで支払うかが問題となりますが、平成30年度司法研究の報告では、今後も養育費の支払終期は原則として20歳になるとされました。

(3) 養育費の支払義務の終期は未成熟子を脱する時期であって,個別の事案に応じて認定判断される。未成熟子を脱する時期が特定して認定されない事案については,未成熟子を脱するのは20歳となる時点とされ,その時点が養育費の支払義務の終期と判断されることになると考える。

平成30年度司法研究概要

養育費を離婚調停・審判などですでに決めた場合

養育費を離婚調停・審判などですでに決めている場合には、調停条項や審判書などで決められた年齢まで養育費を支払う必要があります。
調停などでは、「成人まで」、「20歳まで」、「22歳まで」、「大学卒業時まで」などと決められることが多いと思われます。

すでに取り決めた養育費と成人年齢引き下げの影響

2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられます。
調停条項などですでに「成人まで」と決めていた場合、この成人年齢の引き下げの影響があるかどうかですが、平成30年度司法研究の報告では、影響はないものとされました。

すなわち、2022年3月までに調停条項などで「成人まで」と決められたものである場合には、養育費は20歳まで支払う必要があります。

法務省|成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00230.html

(1) 改正法の成立又は施行前に養育費の終期として「成年」に達する日までなどと定められた協議書,家事調停調書及び和解調書等における「成年」の意義は,基本的に20歳と解するのが相当である。

平成30年度司法研究概要

成人年齢の引下げが事情変更になるか

一度養育費を決めた場合でも、その後事情の変更があるときは、養育費の変更を請求することができます。

しかしながら、平成30年度司法研究の報告では、今回の成人年齢の引下げは、養育費変更の事情変更には該当しないとされました。
したがって、成人年齢の引下げにより、直ちに養育費を変更することはできません。

(2) 改正法の成立又は施行自体は,当事者問の協議,家事調停,和解,家事審判及び離婚判決において,既に合意や裁判により満20歳に達する日までなどと定められた養育費の支払義務の終期を18歳に変更すべき事由にはならない。
(4) 婚姻費用についても,子が18歳に達したことが直ちに婚姻費用の減額事由に該当するとはいえない。

平成30年度司法研究概要

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