コラム

養育費の見直し(新算定表)

養育費の見直し(新算定表)

裁判所より、養育費の算定方法の見直しがなされました。
2019年12月23日に裁判所より、新たな養育費算定表等が発表されました。
方向性としては、現在より養育費が増額されており、平均して月2万円程度の増額になります。
以下では新たな養育費算定表を解説します。

養育費、月1~2万円増 最高裁が算定表見直しー日本経済新聞 電子版
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53673930S9A221C1CR8000/

養育費の算定表改定 増額傾向 | 2019/12/23(月) -Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6346107

裁判所のウェブサイトにも以下が掲載されています。

裁判所|平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
http://www.courts.go.jp/about/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

養育費算定表とは

養育費算定表とは、夫(義務者)と妻(権利者)の収入、子供の年齢や数から、簡易に養育費を算定できる表をいいます。

現在の家庭裁判所の調停・審判でも養育費算定表が用いられており、特段の事情がない限り、養育費は養育費算定表に基づいて決められます。

2019年11月までは旧養育費算定表が利用されていましたが、これは平成15年に裁判所の研究会が発表したものでした。
15年以上経過したため、今回新たな養育費算定表が発表されました。

養育費新算定表(2019年12月23日公表)の考え方

算定表改定の目的

算定表の改定は、旧算定表発表から15年以上経過したこと、また、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことから、改定されたものです。

1 司法研究の目的
(1) 標準算定方式・算定表の提案から15年余りが経過していることを踏まえ,これを,より一層社会実態を反映したものとすることに加え,算定方法に改良すべき点がないか検証・対応する。
(2)改正法による成年年齢引下げによる影響(養育費の終期の関係等)について検討する。

平成30年度司法研究概要

新算定表の基本的な考え方

新算定表の基本的な考え方は旧算定表と同様です。
ただし、基礎としていた統計資料を最新のものに更新しています。

算定表の考え方に関する詳しい説明は以下をご覧ください。
養育費の計算

2 算定方法の基本的な枠組み
 算定方法の基本的な枠組みは,標準算定方式・算定表と同様,収入按分型(生活保護基準方式)とする。
3 統計資料の更新
 統計資料・制度等については,最新のものに更新する。

平成30年度司法研究概要

基礎収入

基礎とする統計資料や制度が変更された結果、以下のとおり変更になっています。
経費部分の割合は減った形で算定されているので、手取り収入は15年前より増えているという算定になっています。

給与所得者の公租公課
(旧)12~31%
(新)8~35%
給与所得者の職業費
(旧)20~19%
(新)18~13%
給与所得者の特別経費
(旧)26~16%
(新)20~14%
給与所得者の基礎収入割合
(旧)42~34%
(新)54~38%
自営業者の基礎収入割合
(旧)52~47%
(新)61~48%

4 基礎収入
(1) 公租公課は,標準算定方式・算定表と同様,理論値で算出する(その結果,総収入に占める公租公課の割合は,おおむね8~35%となる。
(2) 職業費は,標準算定方式・算定表と同様の7項目を控除の対象とし,「被服及び履物」,「通信」及び「書籍・他の印刷物」のみ世帯人員で除し,有業人員で乗じた金額を職業費として計上し,その他の費目についてはその全額を職業費として計上する(その結果,総収入に占める職業費の割合は,おおむね18~13%となる。)。
(3) 特別経費は,標準算定方式・算定表と同様,住居関係費,保健医療及び保険掛金を特別経費として総収入から控除する(その結果,総収入に占める特別経費の割合は,おおむね20~14%となる)。
(4) 前記(1)~(3)の結果,給与所得者の総収入に占める基礎収入割合は,おおむね54~38%となる。
(5)自営業者の基礎収入は,標準算定方式・算定表と同様,基礎収入が|司一となる給与所得者の総収入と自営業者の総収入の対応関係を求め,自営業者の総収入に対する所得税及び住民税の割合,特別経費の割合並びに基礎収入割合を求めることにより算出する(その結果,総収入に占める基礎収入割合は,おおむね61~48%となる。)

平成30年度司法研究概要

生活費指数

基礎とする統計資料や制度が変更された結果、以下のとおり変更になっています。
0~14歳の生活費は増える一方、15歳以上に関しては生活費は減っていると算定されています。

0~14歳
(旧)55
(新)62
15歳以上
(旧)90
(新)85

5 生活費指数
(1) 子の年齢区分は,標準算定方式・算定表と同様,2区分とし,区分期間は,0~14歳,15歳以上とする。
(2) 生活費指数算出に当たって用いる公立高等学校の学校教育費の統計は,高校無償化の影響を受けている平成25年度を除く,直近の4年分の統計を用いる。
(3) 生活費指数の算出方法は,標準算定方式・算定表と同様とし,世帯区分は考慮しないこととする(その結果,生活費指数は,0~14歳が62, 15歳以上が85となる。)。

平成30年度司法研究概要

義務者が低所得の場合

夫の収入が低いときなどは算定表上、養育費がゼロ円になってしまうことがありました。
このような場合は、従前と同様、個別的に判断がなされます。

これらに関する問題の詳しい点は以下をご覧ください。
源泉徴収票や明細を提出しない場合の養育費
退職した場合の養育費

6 義務者が低所得の場合
 義務者の経済水準が低い場合については,標準算定方式・算定表と同様,算定表の枠内で個別具体的な事案に応じて検討する。

平成30年度司法研究概要

成人年齢の引き下げ

2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳に変更されます。

2022年4月1日より前に養育費を決めた場合で、その終期が「成年」までとなっている場合には、「成年」は20歳を指すものと考えられ、20歳まで支払う必要があるとされました。

今後家庭裁判所で養育費を決める場合でも、養育費の支払終期は原則として20歳となるとされました。

一度養育費を決めた場合でも、その後事情変更があった場合には養育費の変更を請求することができます。しかしながら、今回の成人年齢の引下げの法改正は、事情変更には該当しないとされました。したがって、法改正により一度決められた養育費を変更することはできません。

この問題について詳しくは以下をご覧ください。
養育費はいつまで支払う必要があるか

7 成年年齢引下げによる影響(養育費の支払義務の終期等)
(1) 改正法の成立又は施行前に養育費の終期として「成年」に達する日までなどと定められた協議書,家事調停調書及び和解調書等における「成年」の意義は,基本的に20歳と解するのが相当である。
(2) 改正法の成立又は施行自体は,当事者問の協議,家事調停,和解,家事審判及び離婚判決において,既に合意や裁判により満20歳に達する日までなどと定められた養育費の支払義務の終期を18歳に変更すべき事由にはならない。
(3) 養育費の支払義務の終期は未成熟子を脱する時期であって,個別の事案に応じて認定判断される。未成熟子を脱する時期が特定して認定されない事案については,未成熟子を脱するのは20歳となる時点とされ,その時点が養育費の支払義務の終期と判断されることになると考える。
(4) 婚姻費用についても,子が18歳に達したことが直ちに婚姻費用の減額事由に該当するとはいえない。

平成30年度司法研究概要

事情変更

一度養育費を決めた場合であっても、その後事情の変更があるときは養育費の変更を請求することができます。
しかしながら、今回の新養育費算定表への改定は事情変更には該当しないとされました。
したがって、算定表が改定されたからといって、すぐに養育費の変更を請求することはできません。

この問題について詳しくは以下をご覧ください。
養育費の増額

8 事情変更について
(1) 本研究の発表は,養育費等の額を変更すべき事情変更には該当しない。
(2) 客観的事情の変更があるなど,既に定めた養育費等を変更すべき場合の養育費等の算定に当たっては,本研究の提案した改定標準算定方式・算定表を用いることが期待される。

平成30年度司法研究概要

具体的な養育費新算定表の養育費(旧表との比較)

新養育費算定表の場合、旧表と比較して具体的な養育費・婚姻費用は以下のとおりになります。
なお、養育費というのは離婚後に支払うもので、婚姻費用は、離婚前別居中等に支払うものです。

夫年収600万円、妻年収100万円の場合

※子はいずれも14歳未満。

養育費(子1人)
(旧)4万円~6万円
(新)6万円~8万円

養育費(子2人)
(旧)8万円~10万円
(新)8万円~10万円

養育費(子3人)
(旧)8万円~10万円
(新)10万円~12万円

婚姻費用(夫婦のみ)
(旧)6万円~8万円
(新)8万円~10万円

婚姻費用(子1人)
(旧)10万円~12万円
(新)10万円~12万円

婚姻費用(子2人)
(旧)10万円~12万円
(新)12万円~14万円

婚姻費用(子3人)
(旧)12万円~14万円
(新)14万円~16万円

夫年収400万円、妻年収300万円の場合

※子はいずれも14歳未満。

養育費(子1人)
(旧)2万円~4万円
(新)2万円~4万円

養育費(子2人)
(旧)2万円~4万円
(新)4万円~6万円

養育費(子3人)
(旧)4万円~6万円
(新)4万円~6万円

婚姻費用(夫婦のみ)
(旧)1万円~2万円
(新)1万円~2万円

婚姻費用(子1人)
(旧)4万円~6万円
(新)4万円~6万円

婚姻費用(子2人)
(旧)4万円~6万円
(新)6万円~8万円

婚姻費用(子3人)
(旧)6万円~8万円
(新)8万円~10万円

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