コラム

源泉徴収票や明細を提出しない場合の養育費

源泉徴収票や明細を提出しない場合

離婚調停や離婚訴訟で養育費の計算が問題となる場合、通常は当事者双方から収入に関する資料を提出させます。
給与所得者の場合には、給与明細や源泉徴収票、自営業者の場合には確定申告書や課税証明書等です。
そして、これら資料をもとに当事者双方の収入を認定し、養育費を算出します。
しかしながら、一方の当事者が収入に関する資料を提出しない場合があります。

送付嘱託による方法

相手方が給与所得者で、給与明細や源泉徴収票を提出しない場合には、勤務先に対して裁判所を通じて送付嘱託を行うことが考えられます。
裁判所から勤務先に対して、給与明細や源泉徴収票を提出してもらうのです。

自営業者の場合

ただし、特に自営業者などの場合には、本人に資料を提出してもらう以外に、収入を把握することが難しいという事情もあります。
このような場合、養育費はどのように算定されるのでしょうか。

賃金センサスによる方法

相手方が収入に関する資料を提出しない場合、厚生労働省の賃金センサスを用いて収入を推定し、推定された収入をもとに養育費を計算する、ということがあります。
なお、賃金センサスは、性別、年齢、業種等によって分かれているため、これらの事情を確認の上、それぞれの事案にあった賃金センサスが用いられるのが通常です。
 
たとえば、宇都宮家審平成8年9月30日では、「相手方については、家族状況、職業、収入、支出などに関する資料が全く得られない。そこで、家族については、住民票から6人家族同居と推定し、相手方の子は全員成人しているので、父が扶養する必要はないものとし、相手方の妻及び母を被扶養家族とする。相手方の職業は、申立人の陳述によりダンプカー持込みの運転手と認める。またその収入については、平成6年の「賃金構造基本統計調査報告」(賃金センサス)中の「営業用大型貨物自動車運転者(男)及び営業用普通・小型貨物自動車運転者(男)50~54歳」企業規模別及び都道府県別に拠ることとする。」などとされています。

資料が信用できない場合の養育費の算定

相手方が収入に関する資料を一応提出したものの、実態とは相違していると疑われるケースがありえます。
特に、自営業者やオーナー企業などで収入が操作できるような場合に、このようなことがありえます。
このような場合に、操作される前の収入をもとに養育費を計算することもありえますが、資料を提出しない場合と同様、賃金センサスを用いることもあります。

たとえば、大阪高決平成16年5月19日は、「相手方提出の給与支払明細書は、相手方が○○織布から受けている給与額を正しく記載したものであると考えるには疑問があるといわざるをえず、相手方は、○○織布で稼働することにより、少なくとも、抗告人に告げていた程度の収入を得ていたのではないかと疑われるのであって、この明細書やこれと概ね一致する源泉徴収票に信頼性を認めて相手方の収入を認定することは困難である。
したがって、未成年者の養育費に係る相手方の分担額を試算する際には、相手方の収入を平成14年賃金センサス(第4巻第1表F、大阪府繊維産業・企業規模計・25歳~29歳男子労働者)により年額378万1000円と推計するのが相当である(この推計額は公租公課を含むものである。)。」としています。

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