子どもが私立中学や私立高校に行っている場合、公立中学や公立高校と比較して学費等が多くかかります(私立小学校も同様です)。
この多くかかる学費は養育費・婚姻費用の算定において考慮されるのでしょうか。
養育費算定表に基づく養育費の計算では、子どもの学費は、公立中学・公立高校に関する学校教育費を前提に考慮されています。
したがって、養育費算定表に基づく養育費の計算では、私立中学・私立高校の学費などは考慮されていません。
子どもが私立校に行っている場合、必ずしも学費が考慮されているとはいえません。
考慮されるのは、私立の学校に就学することに合理性がある場合です。
合理性がある場合とは、具体的には、夫婦共に子供が私立学校に進学することに承諾しているか、一方が承諾していなくても、夫婦の収入・学歴・地位などから不合理でない場合です。
このような場合には、養育費・婚姻費用の算定において子どもの私立の学費が考慮される可能性があります。
私立校の学費を考慮するとして、夫婦どちらがどの程度負担するかについては、複数の見解があり、審判例も定まっていません。
私立校の学費を夫婦の収入の按分で負担するという考え方です。
学費が月30,000円で、夫の収入が400万円、妻の収入が200万円とすると、夫が20,000円、妻が10,000円を負担することになります。
東京家審平27・6・26
算定表では公立中学校・公立高等学校に関する学校教育費は考慮されているが、それ以外は考慮されていない。そして、本件では、二女が平成二七年四月に私立大学に進学しているから、算定表で考慮されている学校教育費等を超える部分については、それぞれの収入で按分すべきである。
私立校の学費を夫婦が等分に負担するという考え方です。
学費が月30,000円ですと、夫婦共に15,000円ずつ負担することになります。
大阪高決平成26年8月27日
そこで、既に考慮されている学校教育費を50万円とし、長男の□□高等部の学費及び諸費の合計約90万円からこの50万円を差し引くと40万円となるところ、この超過額40万円は、抗告人及び相手方がその生活費の中から捻出すべきものである。そして、標準的算定方式による婚姻費用分担額が支払われる場合には双方が生活費の原資となし得る金額が同額になることに照らして、上記超過額を抗告人と相手方が2分の1ずつ負担するのが相当である。したがって、抗告人は、上記超過額40万円の2分の1に当たる20万円(月額1万6000円程度)を負担すべきこととなり、これを、上記(3)のとおり標準的算定方式の算定表への当てはめによって得られた婚姻費用分担額に加算すべきである。
私立校の学費の夫婦での負担割合を様々な事情を考慮したうえで決定するという考え方です。
大阪高決平成28年3月17日
長女の上記学費のうち、年額三三万三八四四円(公立高校の教育費の平均。判例タイムズ一一一一号二九〇頁参照)を超える部分については、いわゆる標準的算定方式において、通常の教育費として考慮されていない特別の学費として、抗告人と相手方の収入状況等に照らし、その八七%を抗告人において負担するのが相当である。
子どもが私立高校に在籍する場合にも、高等学校等就学支援金が給付されますが、この高等学校等就学支援金の給付は、養育費・婚姻費用の算定にあたって考慮されません。
塾や習いごとの費用に関しても、考慮されるのは、合理性がある場合です。
合理性がある場合とは、具体的には、夫婦共に子供が塾や習い事に行くことに承諾しているか、一方が承諾していなくても、夫婦の収入・学歴・地位などから不合理でない場合です。
このような場合には、養育費・婚姻費用の算定において子どもの塾や習いごとが考慮される可能性があります。
当初養育費を決めた際には私立校に行くことを想定していなかったものの、その後私立校に言った場合に、養育費の増額ができるかどうかに関しては、以下をご覧ください。
養育費の増額