所有者不明土地では、不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず、又は判明しても連絡がつかないことがあるが、その中でも、所有者を把握することが特に困難であるものがあります。
所有者が不在者であるケースや、登記名義人が死亡して相続 人のあることが明らかでない相続財産になっているケースがその典型であるが、その他にも、所有者が会社であって、その代表者が不在者であるケースなどが考えられます。
これらのケースにおいては、土地が利用も管理もされずに放置されることになり、その状態が継続すると、例えば土地の地盤が緩んで隣地等に崩落する危険を生じたり、 土地が害虫や害獣の巣窟となって周囲に危険を及ぼしたりすることがあります。
そこで、法制審議会では、所有者不明土地の管理制度を創設することが検討されています。
以下では、所有者不明土地の管理制度の法改正に関する法制審議会(民法・不動産登記法部会)の具体的な議論内容をご紹介します。
法務省:法制審議会-民法・不動産登記法部会
http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00302.html
なお、相続登記の改正に関する議論に関しては、以下をご覧ください。
裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地について、必要があると認めるときは,利害関係人の申立てにより、その申立てに係る土地又は共有持分を対象として、土地管理人による管理を命ずる処分(土地管理命令) をすることができる。
土地管理人は次のような権限等を有する。
⑴ 裁判所は、土地管理命令をする場合には、当該土地管理命令において、土地管理人を選任しなければならない。
⑵ ⑴の規律により土地管理人が選任された場合には、土地管理命令の対象とされた 土地又は共有持分及びその管理、処分その他の事由により土地管理人が得た財産の管理及び処分をする権利は、土地管理人に専属する。
⑶ 土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには,裁判所の許可を得なければならない。
ア 保存行為
イ 土地の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
⑷ ⑶の規律に違反して行った土地管理人の行為は、無効とする。ただし、土地管理人は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
⑸ 土地管理命令が発せられた場合には、当該土地管理命令の対象とされた土地に関する訴えについては、土地管理人を原告又は被告とする。
⑴ 土地管理人は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならない。
⑵ 土地管理人は、土地管理命令の対象とされた土地の所有者のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。
土地管理人は、土地管理命令の対象とされた土地及びその管理、処分その他の事由により土地管理人が得た財産から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。
⑴ 土地管理人は、管理命令の対象とされた土地の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その所有者のために、当該金銭を当該土地の所在地の供託所に供託することができる。
⑵ 土地管理人は、⑴の規律による供託をしたときは、その旨その他一定の事項を公告しなければならない。
【甲案】裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物について、必要があると認めるときは、利害関係を有する第三者の申立てにより、その申立てに係る建物又は共有持分を対象として、建物管理人によ る管理を命ずる処分(建物管理命令)をすることができる。
【乙案】裁判所は、土地管理命令の対象とされた土地の上にその土地の所有者又は共有持分を有する者が所有する建物がある場合において、必要があると認めるときは、利害関係を 有する第三者の申立てにより、その申立てに係る建物又は共有持分を対象として、土地管理人による建物の管理を命ずる処分(土地建物管理命令)をすることができる。
【丙案】建物の管理に関する特別の規律は設けない。
土地管理人は、土地管理命令等の対象となる土地に土地所有者の所有する動産がある場合において、必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該動産を処分することができる。