特別養子縁組の上限年齢の引上げ等(民法等の改正)

特別養子縁組に関する民法等の改正

現在,児童養護施設等には,保護者がいないことや虐待を受けていることなどが原因で,多数の子が入所しています。
その中には,特別養子縁組を成立させることにより,家庭において養育することが適切な子も少なくないと言われています。
そこで、特別養子縁組制度を利用しやすくするため、令和元年6月7日、民法等の改正が行われました。なお、施行は1年以内が予定されています。

具体的には、以下のような改正がなされています。
・特別養子縁組における養子となる者の年齢の上限を原則6歳未満から原則15歳未満に引き上げる
・特別養子縁組の成立の手続を二段階に分けて養親となる者の負担を軽減する

詳しくは以下をご覧ください。
法務省:民法等の一部を改正する法律(特別養子関係)について

特別養子縁組とは

養子制度とは、実親子ではない者の間に,法的な親子関係を創設するものです。
法的な親子の間では,相互に相続権を有し,扶養義務を負います。

普通養子制度は、合意・戸籍窓口への届出で成立します(未成年者を養子とするには家庭裁判所の許可が必要)。
また、養子候補者に年齢制限はなく、合意による離縁が可能です。

一方、特別養子制度は、家庭に恵まれない子に温かい家庭を提供して,その健全な養育を図ることを目的として創設された,専ら子どもの利益を図るための制度です。
実親子関係を終了させること,離縁の要件を厳格にすることによって,養親子関係を強固なものとして,養子が安定した家庭で養育されるようにすることを目的としています。
特別養子縁組は、実親による養育が困難であること,実親の同意があること(ただし,虐待事案等では不要),養親の下での養育が相当であること等が要件となっており、家庭裁判所の審判で成立します。
養子候補者に上限年齢があります(現行法:原則6歳未満)。
離縁は,養親の虐待がある等の要件の下で,例外的に家庭裁判所の審判によらなければ認められません。
予定外の妊娠等のために実親に養育の意欲が欠ける場合、実親が行方不明の場合、実親による虐待のために家庭に戻すことができない場合などに利用されることが想定されています。

特別養子の上限年齢の引上げ(民法の改正)

現行法

養子の上限年齢は、原則として特別養子縁組の成立の審判の申立ての時に6歳未満であるとされており、例外として6歳に達する前から養親が引き続き養育している場合には、8歳未満まで可とされています。
しかしながら、年長の児童について,特別養子制度を利用することができないことが指摘されていました。

改正法

審判申立時における上限年齢(新民法第817条の5第1項前段・第2項)

養子の上限年齢は原則として特別養子縁組の成立の審判の申立ての時に15歳未満であるとされました。
例外として、①15歳に達する前から養親候補者が引き続き養育されている場合、②やむを得ない事由により15歳までに申立てできない場合には、15歳以上でも可とされました。

審判確定時における上限年齢(新民法第817条の5第1項後段)

審判確定時に18歳に達している者は,縁組不可とされました。

養子の同意(新民法第817条の5第3項)

養子が審判時に15歳に達している場合には,その者の同意が必要とされました。
15歳未満の者についても,その意思を十分に考慮しなければならないとされました。

(養子となる者の年齢)
第八百十七条の五
第八百十七条の二に規定する請求の時に十五歳に達している者は、養子となることができない。特別養子縁組が成立するまでに十八歳に達した者についても、同様とする。
2前項前段の規定は、養子となる者が十五歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合において、十五歳に達するまでに第八百十七条の二に規定する請求がされなかったことについてやむを得ない事由があるときは、適用しない。
3養子となる者が十五歳に達している場合においては、特別養子縁組の成立には、その者の同意がなければならない。

特別養子縁組の成立の手続の見直し(家事事件手続法及び児童福祉法の改正)

現行法

養親が家庭裁判所に対して特別養子縁組許可の申立てを行います。
家庭裁判所は、①実親による養育が著しく困難又は不適当であるか否か、➁実親の同意の有無(実親は撤回可能)、③養親子のマッチング(6か月以上の試験養育)を判断したうえ、特別養子縁組を認めるか否か判断します。

現行法は、以下のような点が問題と指摘されていました。
①実親による養育状況に問題ありと認められるか分からないまま,試験養育をしなければならない。
②実親による同意の撤回に対する不安を抱きながら試験養育をしなければならない。
③実親と対立して,実親による養育状況等を主張・立証しなければならない。

改正法

二段階手続の導入(新家事事件手続法第164条・第164条の2関係)

特別養子縁組を以下の二段階の審判で成立させます。
(ア)実親による養育状況及び実親の同意の有無等を判断する審判(特別養子適格の確認の審判)
(イ)養親子のマッチングを判断する審判(特別養子縁組の成立の審判)

養親候補者は,第1段階の審判における裁判所の判断が確定した後に試験養育をすることになります。

同意の撤回制限(新家事事件手続法第164条の2第5項関係)

実親が第1段階の手続の裁判所の期日等でした同意は,2週間経過後は撤回不可となります。

児童相談所長の関与(新児童福祉法第33条の6の2・第33条の6の3)

児童相談所長が第1段階の手続の申立人又は参加人として主張・立証をします。

(特別養子縁組の成立の審判事件)
第百六十四条
(略)
2養子となるべき者は、特別養子適格の確認(養子となるべき者について民法第八百十七条の六に定める要件があること及び同法第八百十七条の七に規定する父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合に該当することについての確認をいう。以下この条及び次条において同じ。)の審判(申立人の同条第一項の規定による申立てによりされたものに限る。)を受けた者又は児童相談所長の申立てによる特別養子適格の確認の審判(特別養子縁組の成立の申立ての日の六箇月前の日以後に確定したものに限る。)を受けた者でなければならない。
3養子となるべき者の親権者(申立人の配偶者である民法第八百十七条の三第二項ただし書に規定する他の一方を除く。以下この項において同じ。)及びその親権者に対し親権を行う者は、特別養子縁組の成立の審判事件において養子となるべき者を代理して手続行為をすることができない。
4養子となるべき者の父母(申立人の配偶者である民法第八百十七条の三第二項ただし書に規定する他の一方を除く。第十項において同じ。)は、第四十二条第一項及び第三項の規定にかかわらず、特別養子縁組の成立の審判事件の手続に参加することができない。
5第百十八条の規定は、特別養子縁組の成立の審判事件(当該審判事件を本案とする保全処分についての審判事件を含む。)における養親となるべき者並びに養子となるべき者及び申立人の配偶者である民法第八百十七条の三第二項ただし書に規定する他の一方について準用する。
6家庭裁判所は、特別養子縁組の成立の審判をする場合には、次に掲げる者の陳述を聴かなければならない。一養子となるべき者(十五歳以上のものに限る。)二養子となるべき者に対し親権を行う者(養子となるべき者の父母及び養子となるべき者の親権者に対し親権を行う者を除く。)及び養子となるべき者の未成年後見人
7特別養子適格の確認の審判(児童相談所長の申立てによる特別養子適格の確認の審判を含む。以下この項において同じ。)は、特別養子縁組の成立の審判事件の係属する裁判所を拘束する。この場合において、特別養子適格の確認の審判は、特別養子縁組の成立の審判事件との関係においては、特別養子縁組の成立の審判をする時においてしたものとみなす。
8特別養子縁組の成立の審判は、第七十四条第一項に規定する者のほか、第六項第二号に掲げる者に告知しなければならない。
9特別養子縁組の成立の審判は、養子となるべき者の年齢及び発達の程度その他一切の事情を考慮してその者の利益を害すると認める場合には、その者に告知することを要しない。ただし、養子となるべき者が十五歳に達している場合は、この限りでない。
10特別養子縁組の成立の審判は、養子となるべき者の父母に告知することを要しない。ただし、住所又は居所が知れている父母に対しては、審判をした日及び審判の主文を通知しなければならない。
11家庭裁判所は、第二項の規定にかかわらず、特別養子縁組の成立の審判を、特別養子適格の確認の審判と同時にすることができる。この場合においては、特別養子縁組の成立の審判は、特別養子適格の確認の審判が確定するまでは、確定しないものとする。
12家庭裁判所は、前項前段の場合において、特別養子適格の確認の審判を取り消す裁判が確定したときは、職権で、特別養子縁組の成立の審判を取り消さなければならない。
13特別養子縁組の成立の審判は、養子となるべき者が十八歳に達した日以後は、確定しないものとする。この場合においては、家庭裁判所は、職権で、その審判を取り消さなければならない。
14次の各号に掲げる審判に対しては、当該各号に定める者は、即時抗告をすることができる。
一特別養子縁組の成立の審判養子となるべき者及び第六項第二号に掲げる者
二(略)
15養子となるべき者(十五歳未満のものに限る。)による特別養子縁組の成立の審判に対する即時抗告の期間は、養子となるべき者以外の者が審判の告知を受けた日(二以上あるときは、当該日のうち最も遅い日)から進行する。

(特別養子適格の確認の審判事件)
第百六十四条の二
家庭裁判所は、養親となるべき者の申立てにより、その者と養子となるべき者との間における縁組について、特別養子適格の確認の審判をすることができる。ただし、養子となるべき者の出生の日から二箇月を経過する日まで及び養子となるべき者が十八歳に達した日以後は、この限りでない。
2特別養子適格の確認の審判事件は、養親となるべき者の住所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。
3特別養子適格の確認の申立ては、特別養子縁組の成立の申立てと同時にしなければならない。
4第百十八条の規定は、特別養子適格の確認の審判事件における養親となるべき者並びに養子となるべき者及び養子となるべき者の父母について準用する。
5民法第八百十七条の六本文の同意は、次の各号のいずれにも該当する場合には、撤回することができない。ただし、その同意をした日から二週間を経過する日までは、この限りでない。一養子となるべき者の出生の日から二箇月を経過した後にされたものであること。二次のいずれかに該当するものであること。イ家庭裁判所調査官による事実の調査を経た上で家庭裁判所に書面を提出してされたものであること。ロ審問の期日においてされたものであること。
6家庭裁判所は、特別養子適格の確認の審判をする場合には、次に掲げる者の陳述を聴かなければならない。この場合において、第二号に掲げる者の同意がないにもかかわらずその審判をするときは、その者の陳述の聴取は、審問の期日においてしなければならない。
一養子となるべき者(十五歳以上のものに限る。)
二養子となるべき者の父母三養子となるべき者に対し親権を行う者(前号に掲げる者を除く。)及び養子となるべき者の未成年後見人四養子となるべき者の父母に対し親権を行う者及び養子となるべき者の父母の後見人
7家庭裁判所は、特別養子縁組の成立の申立てを却下する審判が確定したとき、又は特別養子縁組の成立の申立てが取り下げられたときは、当該申立てをした者の申立てに係る特別養子適格の確認の申立てを却下しなければならない。
8家庭裁判所は、特別養子適格の確認の申立てを却下する審判をする場合には、第六項第二号及び第三号に掲げる者の陳述を聴かなければならない。
9特別養子適格の確認の審判は、第七十四条第一項に規定する者のほか、第六項第三号及び第四号に掲げる者に告知しなければならない。
10特別養子適格の確認の審判は、養子となるべき者の年齢及び発達の程度その他一切の事情を考慮してその者の利益を害すると認める場合には、その者に告知することを要しない。
11家庭裁判所は、特別養子適格の確認の審判をする場合において、第六項第二号に掲げる者を特定することができないときは、同号及び同項第四号に掲げる者の陳述を聴くこと並びにこれらの者にその審判を告知することを要しない。
12次の各号に掲げる審判に対しては、当該各号に定める者は、即時抗告をすることができる。
一特別養子適格の確認の審判養子となるべき者及び第六項第二号から第四号までに掲げる者
二特別養子適格の確認の申立てを却下する審判申立人
13養子となるべき者による特別養子適格の確認の審判に対する即時抗告の期間は、養子となるべき者以外の者が審判の告知を受けた日(二以上あるときは、当該日のうち最も遅い日)から進行する。
14特別養子縁組の成立の申立てを却下する審判が確定したとき、又は特別養子縁組の成立の申立てが取り下げられたときは、当該申立てをした者の申立てによる特別養子適格の確認の審判は、その効力を失う。

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