養子縁組無効の訴えは、養子縁組の届出に係る身分関係が存在しないことを対世的に確認することを目的とする訴えです(人事訴訟26条)。
養親の包括受遺者と養子との関係は、養子は遺留分を有するため、養子縁組が有効である場合、包括受遺者は遺留分請求を受ける可能性があるというものです。
最判平成31年3月5日は、このような包括受遺者には、養子縁組の無効の訴えを提起する確認の利益はないとされました。
養子縁組の無効の訴えは縁組当事者以外の者もこれを提起することができるが、当該養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることのない者は上記訴えにつき法律上の利益を有しないと解される(最高裁昭和59年(オ)第236号同63年3月1日第三小法廷判決・民集42巻3号157頁参照)。そして、遺贈は、遺言によって受遺者に財産権を与える遺言者の意思表示であるから、養親の相続財産全部の包括遺贈を受けた者は、養子から遺留分減殺請求を受けたとしても、当該養子縁組が無効であることにより自己の財産上の権利義務に影響を受けるにすぎない。
したがって、養子縁組の無効の訴えを提起する者は、養親の相続財産全部の包括遺贈を受けたことから直ちに当該訴えにつき法律上の利益を有するとはいえないと解するのが相当である。
養子縁組無効の訴えの確認の利益については、最判昭和63年3月1日において、「養子縁組無効の訴えは縁組当事者以外の者もこれを提起することができるが、当該養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることのない者は右訴えにつき法律上の利益を有しないと解するのが相当である。」とされています。
「自己の身分関係に関する地位に直接影響」がなければならず、「財産上の権利義務に影響を受けるに過ぎない者」には確認の利益がないと考えられています。
このように考えられているのは、養子縁組無効の訴えが対世的効力を有するからです。
以上のように考えられているため、上記の平成31年判決でも、包括受遺者には、養子縁組の無効の訴えを提起する確認の利益はないとされました。
一方、養子縁組の有効性により自己の財産上の権利義務に影響を受けるにすぎない者は、その権利義務に関する限りでの個別的、相対的解決に利害関係を有するものとして、右権利義務に関する限りで縁組の無効を主張することはできると考えられています(最判昭和63年3月1日)。
したがって、包括受遺者としては、養子縁組の有効性を争う場合には、養子縁組無効の訴えによる方法ではなく、遺留分事件の中で当該主張をすればよいと考えられます。