コラム

勝手に離婚届を提出することはできるか

勝手に離婚届を提出

外国人と日本人の夫婦において、夫婦関係が悪くなった際に、日本人の夫が外国人の女性の署名を偽造した離婚届を勝手に提出して、自らを子どもの親権者と記入していたなどということがあるようです。

日本経済新聞
「配偶者、勝手に離婚届」 外国人の相談相次ぐ

以下ではこのようなことがなぜ起きるか、そして対処法などを説明します。

勝手に離婚届を提出することはできるか

夫婦が離婚しようとする場合、法律上は、離婚の意思と離婚の届出が必要とされています。
ですが、実際には離婚届が市区役所に提出されて受理されれば、戸籍上は離婚したものと取り扱われてしまいます。
親権者を夫婦のどちらにするかも、離婚届に記載欄があるので、離婚届に記載された者が親権者になります。

離婚届を提出する際には、離婚届だけを市区役所に提出すれば足ります。
夫婦の本籍地であれば戸籍謄本なども必要ありません。
窓口での提出もできますし、郵送での提出もできます。
窓口での提出を本人以外の者がすることも可能で、委任状などもいりません。

窓口で本人確認をされますが、本人確認されるのは提出者です。夫婦両者の本人確認書類の提出が義務付けられているわけではありません。
なお、夫婦が窓口に来ない場合には、離婚届がされたという通知を郵送する市区町村もあります。

離婚届は夫婦がそれぞれ記載することになっており、証人2名の記載も必要です。
しかしながら、市区役所で誰が書いたかなどを確認することはありません。

以上のように必ずしも夫婦両者による離婚届の提出が厳密に行われているわけではないため、一方の配偶者が勝手に離婚届を提出する、ということはありえます。

離婚届不受理申出制度

上記のように勝手に離婚届を出されてしまうのを防止するための方策として、離婚届不受理申出制度というものがあります。
これは、あらかじめ一方の配偶者が市区町村に対して、他人が離婚届を提出しようとしても受理しないように届け出るというものです。

これをしておけば、本人以外の者から離婚届の提出がなされた場合、市区町村では離婚届を受理しません。
また、市区町村は、本人以外の者から離婚届の提出がなされたことを、本人に通知します。

離婚無効確認請求訴訟

勝手に離婚届を提出され、戸籍上離婚されたことになってしまった場合には、離婚無効確認請求訴訟を提起することが考えられます。

上記のとおり、法律上は離婚の意思と離婚の届出が必要とされていますが、一方が勝手に離婚届を偽造して提出した場合には、他方の配偶者には離婚の意思もありませんし、有効な届出とは言えないため、離婚は無効になります。

無断で離婚届を提出し離婚が無効となった裁判例として、横浜地判昭和51年7月23日があります。

横浜地判昭和51年7月23日
1 被告次郎は原告を郷里に疎開させ別居以来、原告に対し、幾度となく、離婚の意思を示しまたは離婚の同意を求め、更に離婚調停を申し立てたり、離婚の訴を提起したりしたが、遂に原告の明示・黙示の同意を得られなかつた。そこで、被告次郎は、昭和四七年一〇月二三日、原告に無断で、東京都品川区長に原告および被告次郎の協議離婚届出をし、次いで、同年一一月二四日同区長に被告月子との婚姻届出に及んだ。
2 原告は、昭和四八年二月一四日、大田区役所税務経理部から納税申告書を送付された際の宛名が旧姓の甲野となつていたことから、初めて、右事実を知り、直ちに昭和四八年二月二四日、協議離婚無効確認ならびに被告らの婚姻取消の調停を申し立てた。当時、原告には、協議離婚の意思がなく、届出の意思もなかつたのである。
六 右五の認定事実によれば、昭和四七年一〇月二三日東京都品川区長宛届出による原告と被告次郎との協議離婚は無効という他はない。

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