遺贈とは、被相続人が遺言によって自己の財産を処分することをいいます(民法964条)。
遺贈は通常は財産を無償で与えることが多いですが、これに限らず、使用収益権の設定や担保権の設定、債務の免除も遺贈の対象になります。
また、遺贈は遺言によってしかすることができません。
遺言によって自己の財産を処分する方法として、「相続させる」旨の遺言もあります。
遺贈と「相続させる」旨の遺言とでは、相続人以外に対しても行えるかどうか、や登記の方法、相続放棄ができるか等の点で違いがあります。
遺贈の登記は、登記義務者である相続人または遺言執行者と、登記権利者である受遺者と共同で行う必要があります。
相続人が登記義務者の場合、相続人全員が申請する必要があります。
遺言者が死亡する前に、受遺者が死亡した場合、遺贈は無効になります(民法994条)。
ただし、予備的に、「受遺者が先に死亡していた場合には、〇〇に遺贈する。」といった記載は有効です。
受遺者に一定の行為を負担させることを内容とした遺贈を負担付遺贈といいます。
たとえば、「〇〇を遺贈する代わりに、遺言者の配偶者の面倒を見る」などというのがこれに当たります。
負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負います(民法1002条1項)。
遺言者の有する特定の財産を無償で与える遺贈を、特定遺贈といいます。
特定遺贈の場合、対象財産は遺産分割の対象から外れます。
特定遺贈の受遺者は、いつでも、遺贈を放棄することができます(民法986条1項)。
特定遺贈の放棄は、遺贈義務者に対する意思表示によって行います。
特定遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生じます(民法986条2項)。
包括遺贈とは、遺言者が財産の全部又は一部を一定の割合で示して遺贈することをいいます。
全部の財産を受遺者に取得させる場合を全部包括遺贈といい、一部の割合を受遺者に樹徳させる場合を割合的包括遺贈といいます。
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有します(民法990条)。
したがって、相続財産という権利だけではなく、相続債務という義務も承継することになります。
割合的包括遺贈の場合、相続人と遺産分割を行って、最終的な相続財産の帰属を決定する必要があります。
包括遺贈については、相続人以外の受遺者でも相続人と同一の権利義務を有するとされていることから、包括遺贈を放棄する場合には、相続放棄と同様の手続をとる必要があります。
相続人以外の第三者に対する遺贈については、登記の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することはできません(民法177条)。
一方、相続人に対する遺贈についても、相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分については、登記の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないとされています(民法899条の2)。
したがって、相続人に対する遺贈においても、登記を備えなければ、法定相続分以上の持分については第三者に対抗することはできません。