被保佐人とは

被保佐人とは

被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者で、家庭裁判所より保佐開始の審判を受けたものをいいます(民法11条、12条)。

「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である」とは、痴呆・知的障害・精神障害等により、事理弁識能力(法律行為の結果が自分にとって有利か不利かを判断することができる判断能力)が著しく不十分であることをいいます。
具体的には、日常的な買い物程度であれば一人で可能であるものの、不動産の売買その他重要な法律行為については一人ですることに不安があり、常に他人の援助を受ける必要がある程度の判断能力です。

被保佐人には、家庭裁判所により保佐人が付されます(民法12条、876条の2第1項)。
家庭裁判所が勝手に保佐開始の審判を行うことはなく、配偶者や親族等が家庭裁判所に対して保佐開始を申し立てなければ、被保佐人となったり、保佐人が選任されるということはありません。
成年後見制度には、後見、保佐、補助の3つの類型がありますが、保佐は2番目に本人の判断能力が低い場合の類型になります。

成年被後見人については、「成年被後見人とはなにか」をご覧ください。

保佐制度を利用できるのは、あくまで、「精神的障害により判断能力が著しく不十分である」場合に限られます。
身体障害などで法律行為を行うことが難しいなどという場合には、保佐制度を利用することはできません。
したがって、保佐が利用されることが多いのは、高齢で認知症が進み痴呆状態にある場合や、精神障害などがある場合ということになります。

被保佐人の行為制限

被保佐人となると、一定の重要な法律行為が後で取消が可能になるとともに、一定の法律行為について保佐人に代理権が付与されます。

このように、被保佐人の重要な法律行為を後から取消すことができるので、被保佐人が本人の利益にならない行為をした場合でも、被保佐人を保護することができます。
また、重要な行為を行う必要があるものの、被保佐人本人が行うことが難しい場合に、保佐人が代理して法律行為をすることができます。

たとえば、一人暮らしの高齢者が、所有している不動産を売却する必要はないのに売却したり、逆に必要がないのに購入したりといったこともありえます。

このような場合でも、クーリングオフができる契約であればクーリングオフ期間であれば取消しができますが、クーリングオフ期間を過ぎてしまうと、取消しをすることができません。
しかし、保佐が開始していれば、クーリングオフ期間を過ぎていても、契約を取消しをすることができます。

また、高齢者が不動産を売却する必要があるものの、本人が契約書に署名押印したりすることが難しいことがありえます。

このような場合でも、保佐人がいれば、保佐人が代理人として契約を締結することができます。

法律行為の相手方が、いくら被保佐人であったことを知らなかったとしても、保佐人らは当該法律行為を取消すことができます。
仮に保佐人が被保佐人の法律行為に対して、事前に同意をしていたとしても、後に取消権を行使することは可能と考えられています。
また、被保佐人が行った法律行為が特に被保佐人にとって不利益ではないような場合には、保佐人はこれを追認して有効な法律行為とすることができます。

実際に法律行為の取消をしようという場合には、取引の相手方に対して、内容証明郵便を送付するなどを行うことになります。

取消権

被保佐人が行おうとする法律行為のうち、以下の法律行為を行おうとする場合には、保佐人の同意が必要となります(民法13条1項)。
保佐人の同意がない場合、保佐人及び被保佐人は当該行為を取消すことができます(民法13条4項)。
以下の法律行為は、いずれも重要な財産上の法律行為を例示したものです。

①元本を領収し、又は利用すること
預貯金の払い戻しや、貸金の弁済を受領することも含まれると考えられています。
また、利息を付して金銭を貸し付けたりすることもこれに該当します。

②借財又は保証をすること
金銭を借り受けたり、第三者の借り受けについて保証人になることです。

③不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること
不動産の売買が典型例ですが、抵当権の設定や賃貸借の合意解除などもこれに含まれます。
また、不動産のみならず、高価な保険、有価証券等もこれに含まれますし、こういった資産以外にも、例えば、介護契約や施設入所契約といったものもこれに含まれると考えられています。

④訴訟行為をすること

⑤贈与、和解又は仲裁合意をすること
贈与をすることは対象となりますが、贈与を受けることは対象になりません。

⑥相続の承認若しくは相続放棄又は遺産の分割をすること

⑦贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること

⑧新築、改築、増築又は大修繕をすること

⑨長期の賃貸借をすること
土地の賃貸借については5年以上、建物の賃貸借については3年以上のものをいいます。

上記以外の行為についても、保佐人の同意を得たほうがよい行為がある場合には、申立てにより、保佐人の同意を得なければならない行為が拡張されます(民法13条2項)。
ただし、日常生活に関する行為について、保佐人の同意を必要とすることはできません。
「日常生活に関する行為」には、電気・バス・自動販売機などの利用は該当すると考えられていますが、これら以外の個別具体的な取引に関しては、具体的な事情を考慮して判断するものと考えられています。

代理権

保佐人の場合には、成年後見人とは異なり、当然に被保佐人の法律行為に対する代理権が付与されるわけではありません。
保佐人に代理権を与えたほうが良い場合には、申立てにより、特定の法律行為について保佐人に代理権が付与されます(民法876条の4)。
代理権を付与するためには、本人の同意が必要です(民法876条の4第2項)。

どのような行為について代理権を付与したらよいかを考える際には、裁判所において、代理行為の類型を整理した目録が用意されており、以下のような内容です。
必要な項目にチェックしていくことになります。

1 財産管理関係
(1) 不動産関係
□①本人の不動産に関する取引(□売却,□担保権設定,□賃貸)
□②他人の不動産に関する(□購入,□借地,□借家)契約の締結・変更・解除
□③住居等の新築・増改築・修繕に関する請負契約の締結・変更・解除
(2) 預貯金等金融関係
□①預貯金に関する金融機関等との一切の取引(解約・新規口座の開設を含む 。)
□②その他の本人と金融機関との取引(□貸金庫取引,□保護預かり取引,□証券取引,□為替取引,□信託取引)
(3) 保険に関する事項
□①保険契約の締結・変更・解除
□②保険金の請求及び受領
(4) その他
□①定期的な収入の受領及びこれに関する諸手続(□家賃・地代,□年金・障害 手当金その他の社会保障給付,□その他 )
□②定期的な支出を要する費用の支払及びこれに関する諸手続(□家賃・地代, □公共料金,□保険料,□ローンの返済金,□その他 )
□③本人の負担している債務の弁済及びその処理
2 相続関係
□①相続の承認・放棄
□②贈与,遺贈の受諾
□③遺産分割又は単独相続に関する諸手続
□④遺留分減殺の請求
3 身上監護関係
□①介護契約その他の福祉サービス契約の締結・変更・解除及び費用の支払
□②要介護認定の申請及び認定に関する不服申立て
□③福祉関係施設への入所に関する契約(有料老人ホームの入居契約等を含む 。)の締結・変更・解除及び費用の支払
□④医療契約及び病院への入院に関する契約の締結・変更・解除及び費用の支払
4 登記・税金・訴訟
□①税金の申告・納付
□②登記・登録の申請
□③本人に帰属する財産に関して生ずる紛争についての訴訟行為(民事訴訟法55条2項の特別授権事項を含む。)(*保佐人又は補助人が当該訴訟行為について訴訟代理人となる資 格を有する者であるとき )。
□④訴訟行為(民事訴訟法55条2項の特別授権事項を含む。)について,当該行 為につき訴訟代理人となる資格を有する者に対し授権をすること
5 その他
□①以上の各事務の処理に必要な費用の支払
□②以上の各事務に関連する一切の事項

特許の申立てや訴訟行為

被保佐人は、成年被後見人とは異なり、特許出願や請求その他特許に関する手続や、民事訴訟の訴えの提起などの訴訟行為もできます。

印鑑登録

被保佐人は、成年被後見人とは異なり、印鑑登録をすることも可能です。

医師等の資格制限

被保佐人に関して、医師や弁護士、公務員といった資格の制限はありません。
なお、株式会社の取締役に関しては、被保佐人にも現在でも欠格条項があり資格の制限を受けますが、今後改正が検討されるということです。

選挙権

被保佐人に関して、選挙権・被選挙権の制限はありません。

参考条文

民法11条
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第7条に規定する原因がある者については、この限りでない。

民法12条
保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。

民法13条1項
被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
1. 元本を領収し、又は利用すること。
2. 借財又は保証をすること。
3. 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
4. 訴訟行為をすること。
5. 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成15年法律第138号)第2条第1項 に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
6. 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
7. 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
8. 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
9. 第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。

民法876条の4第1項
家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。

コメント

  1. […] 被保佐人については、「被保佐人とはなにか」をご覧ください。 […]

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