相続人に非行や被相続人に対する虐待・侮辱がある場合に、被相続人の意思に基づいてその相続人の相続資格をはく奪する制度です。
似た制度として相続欠格がありますが、相続欠格とは、裁判所の手続を経る必要がある点が大きな違いです。
廃除が認められるのは以下の事由がある場合です。
虐待とは、被相続人に対して暴力や耐えがたい精神的な苦痛を与えることをいいます。
重大な侮辱とは、被相続人の名誉や感情を著しく害することをいいます。
著しい非行とは、虐待・雄大な侮辱にはあたらないものの、それに類する相続人の遺留分を否定することが正当と言える程度の非行を言います(名古屋高金沢支決平成2年5月16日)。
たとえば、犯罪、服役、遺棄、被相続人の財産の浪費・無断処分、不貞行為、素行不良、長期の音信不通、行方不明などがあげられます。
被相続人が生存中に家庭裁判所に廃除を申し立てる方法です。
被相続人が自己の住所地を管轄する家庭裁判所が管轄となります。
遺言に廃除する意思表示が記載されている場合に、遺言執行者が遅滞なく家庭裁判所に廃除を申立てる方法です。
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所が管轄となります。
申立人は、廃除事由を基礎づける具体的事実を記載した申立書とこれを裏付ける資料を提出します。
一方、廃除を申し立てられた相続人は、これに対する認否と反論及び資料を提出します。
審理において、廃除を申し立てられた相続人の陳述が審問の期日において聴取されます(家事法188条3項)。
裁判所は上記と事実の調査を行ったうえ、廃除事由の存否を認定して審判をします。
生前廃除がなされた場合には、審判の確定によって効力が生じます。
遺言廃除がなされた場合には、相続開始時にさかのぼって効力が生じます。
廃除となっても代襲相続は生じます。
したがって、被廃除者に子がいる場合には、被排除者の子が代襲相続人になります。
遺産分割手続において廃除事由が争いになった場合には、遺産分割調停・審判手続きでは判断されず、上記の審判事件によって解決する必要があります。