相続分の譲渡とは、遺産全体に対する共同相続人の包括的持分又は法律所の地位を譲渡することをいいます。
すなわち、積極財産と消極財産とを包含した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分(包括的持分)の移転をいいます。
相続分の譲渡がなされるケースとして、以下のような場合があります。
相続分の譲渡がなされた場合、譲受人は譲渡人が遺産の上に有する持分割合をそのまま承継取得し、遺産分割手続に関与することができるようになります。
譲受人は、債務も承継することになりますが、債権者との関係では重畳的債務引受の関係になります。
相続分の全部を譲渡した者は、遺産確認の訴えにおける当事者適格を有しません(最判平成26年2月14日)。
相続分の一部のみを譲渡することは可能と考えられています。
遺産分割調停において相続分の譲渡がなされた場合、家庭裁判所は当該相続人を手続から排除します。
家庭裁判所は排除する旨の決定を行い、これにより、当該相続人は相続人としての地位を喪失します。
遺産分割調停において、他の全ての相続人が相続分の譲渡を行い、申立人のみが相続人になった場合、相続分の譲渡をした者を排除することなく、当事者として残したうえで、申立人が遺産を取得する旨の調停に代わる審判がなされます。
相続人間で相続分の譲渡が行われた場合に、特定の相続人が不動産を取得する旨の遺産分割が成立した場合には、被相続人名義から相続人名義へ相続登記をすることができます。
被相続人名義の不動産について、共同相続人以外の第三者が共同相続人のうちの一人から相続分の譲渡を受けた場合に、譲渡を受けた者の名義にするには、①相続を原因とする共同相続人への所有権の移転の登記を経たうえで、②相続分の譲渡による持分の移転登記を順次申請する必要があります。
相続分の譲渡も、当該相続人が相続預貯金を含む相続財産について、取得しないとの意思表示を内容とするものです。
一部の相続人が、相続分の譲渡をしている場合、相続預金の払戻請求をするにあたっては、当該相続人が作成した相続分譲渡証書と印鑑登録証明書を提出する必要があります。
以下の書類を提出して、相続預金を払い戻すことになります。