コラム

財産管理型の寄与分

財産管理型の寄与分

被相続人の財産を管理することによって財産の維持形成に寄与した場合の寄与分です。
たとえば、被相続人の賃貸不動産を管理することで管理費用の支出を免れた場合や被相続人所有の土地の売却に際し、同土地上の家屋の賃借人との立ち退き交渉等をしたことにより、土地の売却価格を増加させた場合です。

要件

財産管理型の寄与分が認められる要件は以下のとおりです。

  1. 被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える特別の寄与であること
  2. 寄与行為の結果として被相続人の財産を維持または増加させていること

財産管理の必要性

被相続人の財産を管理する必要があったことが必要です。
被相続人の貸しアパートについて管理会社との契約がなされているにもかかわらず、共用部分を清掃したとしゅちょうしても寄与分は認められません。

特別の貢献

被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える貢献であることが必要です。
被相続人宅を季節ごとに清掃したという程度では寄与分は認められません。

無償性

無報酬又はこれに近い状態でなされていることが必要です。
ただし、本来の管理報酬等に比べて著しく少額であるような場合は、無償性の要件を満たすものと解されています。
相続人が、相続財産の管理のために被相続人所有の不動産を無償で利用している場合、それだけで寄与分が否定されるものではありませんが、使用利益分については考慮されます。

継続性

財産管理が相当期間に及んでいることが必要です。
2、3か月間だけ財産管理を行ったという程度では、寄与分の対象にはなりません。

評価方法

財産管理行為そのものが寄与行為である場合

たとえば、寄与相続人自身が不動産の賃貸管理や占有者の排除、売買契約締結への関与などを行った場合です。
このような場合、当該行為を第三者に委託した際の報酬額を基準として、それに裁量割合を乗じて計算する方法が一般的です。
ただし、専門家に委託した場合の料金がそのまま寄与相続人への報酬額として認められるわけではありません。

寄与相続人が財産管理に要した金銭を負担した場合

被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度の負担については控除し、その余の部分が寄与分の対象となります。
通常は、財産管理に要した金銭に裁量割合を乗じて計算することになります。

寄与相続人が被相続人所有の不動産を無償で利用している場合

一般的に、その使用利益(賃料相当額)を控除することになります。

被相続人の資金運用と寄与分

寄与相続人が被相続人の資金を株式などに運用した結果、資産が増加した場合、この増加益に関しては寄与分は認められません。

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