コラム

成年後見と死後事務

成年後見人の死後事務

成年被後見人が死亡した場合、原則として後見は終了し、成年後見人の任務も終了することになります。
しかしながら、各種手続きを行う必要がありますし、それ以外にも被後見人の相続人に財産を引き継ぐまでの間、被相続人の財産管理が必要な場合もあり、法律上も一定の行為をすることが認められています。

家庭裁判所への報告

家庭裁判所に対し、被後見人死亡の事実を報告します。

後見終了の登記

法務局に対し、後見終了の登記を申請する必要があります。

後見の清算事務

後見の清算事務を行う必要があります。
具体的には、被後見人が死亡してから2ヶ月以内に管理の計算、すなわち、後見人在職中の収入及び支出を明確にした管理計算書と、現在の財産目録を作成する必要があります。

また、管理していた被後見人の財産を相続人に引き継ぐ必要があります。
相続人間に争いがない場合には、共同相続人間で代表者を選任し、その者に対して引き継ぎを行います。
相続人がいない場合には、相続財産管理人の選任を申立て、相続財産管理人に対し、引き継ぎを行います。
相続人が行方不明である場合には、不在者財産管理人の選任を申立て、相続財産管理人に対し、引き継ぎを行います。

これら引き継ぎをおこなった後、後見事務終了報告書を作成した上、家庭裁判所に報告することになります。

その他成年後見人が行える死後事務

成年後見人は以下の死後事務を行うことができます(民法873条の2)。

  1. 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
  2. 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る)の弁済
  3. 成年後見人の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為

必要があるとき

上記の死後事務行為を行うことができるのは、「必要があるとき」です。
したがって、成年後見人が死後事務行為を行うことが必要でない場合には、死後事務行為を行うことはできません。
たとえば、相続人に財産を引き継いでから相続人が行っても問題がない場合には、成年後見人は死後事務行為を行うことはできません。

相続人の意思に反することが明らかなとき

「成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなとき」も、死後事務行為を行うことはできません。
相続人が複数いる場合、相続人の一人でも反対の意思を表明している場合には、これにあたり、死後事務行為を行うことはできないと考えられます。

相続人が相続財産を管理することができるに至るまで

成年後見人が死後事務行為を行うことができるのは、「相続人が相続財産を管理することができるに至るまで」です。
成年後見人は、成年被後見人の死亡後2か月以内に管理の計算をし、相続人に成年被後見人の財産を引き渡す義務を負っていることから(民法870条)、基本的には死後事務はこの期間までを想定しています。
仮に、相続人間の対立があるなどの理由で、成年後見人が相続人に遺産の引き渡しを行うのが困難である場合には、相続財産管理人選任の申立てを行い(民法918条2項)、選任された相続財産管理人に相続財産を引き継ぐことになります。

特定の財産の保存に必要な行為

「相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為」とは、相続財産に属する債権について時効の完成が間近に迫っている場合に行う時効の中断や、相続財産に属する建物を修繕する必要がある場合にこれを修繕する行為などです。
なお、建物の修繕を行うに際し、その費用を成年被後見人の預金口座から支出する場合、預金口座からの払戻しは、後述の「その他相続財産の保存に必要な行為」にあたり、家庭裁判所の許可が必要と考えられています。

債務の弁済

「相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る)の弁済」とは、成年被後見人の入院の際の医療費や、住居の家賃の支払いなどです。
この支払についても、成年被後見人の預金口座から支出する場合、預金口座からの払戻しは、後述の「その他相続財産の保存に必要な行為」にあたり、家庭裁判所の許可が必要と考えられています。

火葬等に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為

「成年後見人の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為」は、上記とは異なり、家庭裁判所の許可を得て行う必要があります。

「成年後見人の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結」とは、遺体の引き取りや、火葬等に関する葬儀業者との契約の締結をすることなどです。
納骨に関する契約もこれに含まれると考えられる一方、葬儀に関する契約はこれに含まれないと考えられています。

「その他相続財産の保存に必要な行為」とは、債務を弁済するための成年被後見人の預金口座からの払い戻しの他、成年被後見人の自宅の電気・ガス・水道等の解約などです。

家庭裁判所の許可を得ずに、この行為を行った場合、無権代理となり、原則として、当該行為の効果が相続人に帰属しないことになります。
ただし、応急処分や事務管理の規定に基づく場合には、家庭裁判所の許可を得ずに行うことも可能と考えられています。
当該行為を行った後に、事後的に家庭裁判所に許可を求めることも可能と考えられています。

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