夫婦間において、一方が子を連れて別居をしてしまったという場合に、子の引渡しを求める手段としては、家庭裁判所に対して審判前の保全処分を申し立てることが考えられます。
しかしながら、この保全処分が発令されても、子の引渡しがなされない場合があります。
このような場合に、人身保護請求を行うことが考えられます。
人身保護請求とは、法律上正当な手続きによらないで身体の自由を拘束されている者が、その救済を求めるものです。
裁判所は決定で、拘束者に対して、人身保護命令を発し、かつ、判決で釈放その他適当であると認める処分を行うことになります。
この人身保護請求は、本来は、矯正施設の収容者等の釈放を求めるために用いられていましたが、近時では、子の引渡しを求める手段として用いられることが多いと言われています。
人身保護請求の要件は以下のとおりです(人身保護法2条1項、規則4条)。
上記のうち①については、子に意思能力がある場合(およそ10歳程度)はそれが尊重されます。
したがって、子が今の現状に問題がないと考えている場合には、人身保護請求は認められません。
また、②については、非監護権者による子の拘束は、原則として、違法性が顕著な場合に該当すると考えられています。
人身保護請求は、原則として、弁護士を代理人とする必要があります。
被拘束者、拘束者又は請求者の所在地を管轄する高等裁判所又は地方裁判所が管轄になります。
人身保護請求の申立てを行うと、請求者代理人と面接を行ったうえ、請求者及び拘束者を審尋する準備調査期日がもうけられます。
準備調査期日において和解がなされることもありますが、和解がなされない場合には、審問期日がもうけられます。
審問期日にあたっては、裁判所は、拘束者に対し、被拘束者を審問期日に出頭させること、および答弁書の提出を命じます(人身保護命令)。
そして、被拘束者に代理人が付されていない場合には、国選代理人が選任されます。
審問期日は、公開の法廷で、口頭弁論の方式によって行われます。
判決は、審問終結から5日以内に行われますが、請求が認められた場合には、被拘束者は直ちに解放されます。