コラム

後見監督人とは

目次

後見監督人とは

後見監督人とは、成年後見人の事務を監督する者です(民法851条1号)。
家庭裁判所が必要があると認めるときは、成年後見人等の請求により又は職権で、後見監督人が選任されます(民法849条の2)。

後見監督人が選任される場合

後見監督人は、弁護士等の専門家が選任されるのが通例です。
家庭裁判所において、親族後見人だけでは不十分であり、専門職関与が必要であると判断された場合に、後見監督人が選任されます(事案によっては後見監督人ではなく、専門職後見人が選任されることもあります)。

後見監督人が選任されやすい事例として、以下のような事例が挙げられます。

  1. 親族間の紛争がある場合
  2. 被後見人の財産が多い場合
  3. 後見人が親族のために被相続人の財産を利用することを考えている場合

現在では、後見監督人(や専門職後見人)が選任されるケースはかなり多いといわれています。
仮に、後見人その他親族が、後見監督人の選任が不要である旨述べたとしても、家庭裁判所が必要であると判断した場合には、後見監督人が選任されることになります。

後見監督人の欠格事由

後見人の配偶者、直系血族、兄弟姉妹は、後見監督人になることができません(民法850条)。
これは、後見監督人は公平であることが必要であるため、近親者では情義などの問題から十分に監督できない可能性があるからです。

後見監督人の職務

後見監督人の職務は、以下のとおりです(民法851条)。

  1. 後見人の事務を監督すること(1号)
  2. 後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること(2号)
  3. 急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること(3号)
  4. 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること(4号)

後見人の事務を監督すること(民法851条1号)

後見監督人が行う後見人の事務の監督は、具体的には以下のような方法で行います。
以下のいずれの場合においても、後見監督人は善良な管理者の注意をもってその職務を行う必要があります(民法852条・644条)。

後見人が就職時におこなう被後見人の財産調査及び目録作成に立ち会うこと(民法853条2項)

後見人は、遅滞なく被後見人の財産の調査に着手し、1箇月以内に、その調査を終え、かつ、目録を作成しなければなりませんが(民法853条1項)、後見監督人がいる場合には、後見監督人は財産の調査及び目録作成に立ち会う必要があります。
後見監督人が立ち会わない場合には、財産調査、目録作成は無効になります。

後見人が被後見人に対し、債権を有し又は債務を負う場合には、財産の調査に着手する前に、申し出を受けること(民法855条1項)

後見人が被後見人に対して、債権を有し、又は債務を負う場合において、後見監督人がいる場合には、財産の調査に着手する前に、これを後見監督人に申し出る必要があります。
後見人が、被後見人に対して債権を有することを知ってこれを申し出ない場合には、債権を失うことになります(民法855条2項)。

後見人に対し後見の事務の報告もしくは財産の目録の提出を求め、又は後見の事務もしくは被後見人の財産の状況を調査すること(民法863条1項)

後見監督人は、後見人に対し後見の事務の報告もしくは財産の目録の提出を求め、又は後見の事務もしくは被後見人の財産の状況を調査することができます。
逆に言えば、法律上、後見人は定期的に後見監督人に対して報告や説明の義務を負っていません。
後見監督人は、善管注意義務を負うため(民法852条・644条)、まったく後見人に事務の報告を求めなかったり、後見人に不審な事情があるにもかかわらず調査しなかったために、被後見人に損害が生じた場合には、後見監督人も損害賠償の義務を負うことになります。

被後見人の財産の管理その他後見の事務についての必要な処分を行えるよう家庭裁判所に対して請求すること(民法863条2項)

後見監督人は、家庭裁判所の命令を受けて、財産の管理その他後見の事務についての必要な処分をすることができます。
そして、家庭裁判所の命令を受けるため、後見監督人等は、被後見人の財産の管理その他後見の事務についての必要な処分を行えるよう、家庭裁判所に対して請求することができます。

後見人が被後見人に代わって営業又は民法13条1項各号に掲げる行為をするときに、同意すること(民法864条)

後見人が被後見人に代わって、営業や元本の利用、借財又は保証、不動産等の売買、訴訟行為、贈与、和解、相続放棄、遺産分割、贈与の申込みの拒絶、新築、改築、増築又は大修繕、長期の賃貸借をする場合には、後見監督人がいるときは、その同意を得る必要があります。

後見人の任務が終了したときに行う管理の計算に立ち会うこと(民法871条)

後見人は任務が終了した時は、2か月以内に管理の計算を行う必要があります(民法870条)。
後見監督人がいる場合、後見監督人は、この計算に立ち会う必要があります。

なお、後見事務として、訴訟が必要な場合であっても、これを、専門職の後見監督人が受託することはできないと考えられています。

後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること(民法851条2号)

後見人が欠けた場合とは、後見人の死亡・辞任・解任・結核によって、それまでいた後見人が存在しなくなる場合をいいます。
このような場合、後見監督人は、家庭裁判所に後見人の選任を請求する義務を負います。

急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること(民法851条3号)

後見人が欠けたり一時不在などの理由でその職務を行うことができない場合に、緊急の後見事務があり、これをしないと被後見人に回復しがたい損害が生じる場合には、後見監督人はみずから必要な処分をすることができます。
たとえば、時効の中断が必要な場合や、倒壊しようとしている家屋の修繕などの場合がこれにあたります。
なお、建物等を処分する必要があるときには、家庭裁判所の許可を得る必要があります(民法852条・859条の3)。

後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること(民法851条4号)

詳しくは、以下をご覧ください。

後見人の利益相反行為

後見監督人の注意義務

後見監督人がその職務を行うについては、善良なる管理者の注意をもってなすべき義務を負います(民法852条・644条)。
後見監督人がこの注意義務に違反して、被後見人に損害を与えた場合には、損害賠償の責任があるとともに、解任の事由ともなりえます。

後見監督人の報酬

後見監督人には、被後見人の財産の中から、相当な報酬が支払われます(民法852条・862条)。
後見監督人の報酬は、月1万円から3万円程度が多いと思われます。

後見監督人の辞任

後見監督人は、正当な事由があるときには、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます(民法852条・844条)。
正当な事由としては、遠隔地への転居、病気などがあげられます。

後見監督人の解任

後見監督人に、不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、被後見人等や親族は家庭裁判所に後見監督人の解任を請求することができます(民法852条・846条)。
なお、後見人は後見監督人の解任請求はできないと考えられています。

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