子の引渡しについては、子の監護に関する処分としての審判又は仮処分がなされることがあります。
仮処分がなされたにも関わらず、配偶者が子の引渡しを行わない場合があり、このような場合には、強制執行を行う必要があります。
審判前の保全処分による場合、強制執行の方法は、基本的には通常の審判の場合と同様です(家事事件手続法109条3項)。
しかしながら、保全処分の場合、債権者に保全命令が送達されてから2週間を経過してしまうと、執行ができなくなります(家事事件手続法109条2項)。
したがって、審判前の保全処分に基づいて仮処分を行う場合には、日程に十分注意する必要がありますし、直接強制の場合には、執行官の予納金なども必要になりますので、あらかじめ準備をしておくことが重要になります。
子の引渡しについては、直接強制が可能です。
子の引渡しの強制執行については、動産の引渡しの執行の規定(民事執行法122条以下)が類推適用されます。
申立は執行官に対して行い、管轄裁判所は子どもの所在地になります。
申立てに際しては、執行官の費用などを予納する必要があります。
実際の執行は、執行官が債務者の自宅等子供のいる場所に赴き、執行官が債務者から子供の引渡しを受け、債権者に引き渡す形で行われます。
通常は、債権者が執行官に同行し、執行官が子供の引渡しを受けると、すぐに債権者に子供を引き渡すことになります。
なお、直接強制を行うケースは、債務者の抵抗も大きいことがほとんどであり、子供への悪影響も懸念されることから、実際に行われる例はそう多いとはいえません。
子の引渡しについては、間接強制も可能です。間接強制とは、義務者が支払いを行わない場合に、一定の額の金銭を支払うべきことを命じる方法です。
たとえば、子の引渡しをしない場合には、債務者は債権者に対して、1日当たり金1万円を支払え、といった内容を求めることになります。
ただし、債務者が子の引き取りを妨害するおそれがあることの立証が必要になる点は注意が必要です。
間接強制は、審判を行った家庭裁判所に対して申立てを行う必要があります。
間接強制の審理においては、債務者の審尋が必要になります。
間接強制が命ぜられたにもかかわらず、養育費等を支払わない場合には、一般の金銭債権と同様、差押えにより満足を得ることになります。