調停や判決により離婚の慰謝料や財産分与が決まっても、その後相手方がこれを支払わない場合があります。
このような場合、当事者としては、強制執行により慰謝料や財産分与請求権を実現する必要があります。
強制執行の申立てを行う場合には、以下が必要となります。
債務名義とは、判決や調停調書、和解調書などになります。
これらの債務名義は、謄本ではなく正本が必要になります。
判決や調停調書、和解調書には、強制執行を行うにあたっては、執行文を付してもらう必要があります。
通常は、判決や調停調書、和解調書などを、当該裁判所に提出し、執行文を付してもらうことになります。
なお、財産分与としての金銭債権の和解調書の場合や調停に代わる審判の場合は、執行文は不要となります(家事事件手続法75条、287条)。
強制執行を行うためには、債務名義が債務者に送達することが必要です(民事執行法29条)。
そこで、送達証明書を取得する必要があります。
預金や給与などの債権を差押えする場合には、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄になります。
申立には、当事者、債務名義、差し押さえるべき債権の種類及びその他の債権を特定するに足りる事項を明示します。
また、第三債務者に対する陳述催告の申立書も同時に提出するのが通常です。
申立を行うと、執行裁判所から債務者及び第三債務者に対して、差押命令が送達されます。
第三債務者に差押命令が送達されると、第三債務者は債務者に対して弁済をすることができなくなります(民事執行法145条1項)。
債権者としては、取立権を行使して(民事執行法155条1項)、第三債務者に対して支払を請求することになります。
この取立権は、債務者に差押命令が送達されてから1週間経過した後に発生します。
不動産に対する差押えをする場合には、不動産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄になります。
申立には、当事者、債務名義、差し押さえるべき不動産に関する事項を明示します。
申立てを行うと、執行裁判所から登記所に対して、差押登記の嘱託がなされ、差押登記がなされます。
そして、不動産の現況調査等を行ったうえ、売却基準価額が決められ、入札を経て、売却され、債権者に配当されるということになります。