離婚する前に、子について、監護者の指定や子の引渡しを求めたりすることができます。
しかしながら、調停や審判などが行われる場合、結論が出るには時間がかかります。
その間、子供に適切な養育がなされないなどといった事情がある場合には、調停や審判の結果を待っていては遅すぎるということがあります。
そのような場合、子の引渡しを求めて保全処分を申立てることが考えられます。
この保全処分は、子の監護に関する処分を本案とする審判前の仮処分になります(家事事件手続法105条以下)。
子の監護に関する処分の審判事件が係属する家庭裁判所または子の監護に関する処分の調停事件が係属する家庭裁判所が管轄裁判所になります(家事事件手続法105条1項)。
子の監護に関する処分の審判又は調停の申立が係属していることが要件になります。
保全命令が認められるためには、以下を疎明する必要があります。
① 本案認容の蓋然性
② 保全の必要性があること
疎明とは、裁判官が一応確からしいという程度の心証を得ることをいい、本案訴訟における証明よりは低い程度で足りると考えられています。
本案認容の蓋然性とは、申立人が監護者としてふさわしいことであり、申立人や相手方の監護能力、現在の監護状況、子の意向等を検討して判断することになります。
保全の必要性があるとは、子が相手方のもとにいる状況での養育状況の悪さや、あるいは、一方的に相手方が子を連れ去ってしまった場合、などがこれに該当します。
保全の審理手続は、緊急性が高い場合には、保全処分のみを速やかに審理し、審判することが多いと言えます。
一方、緊急性がそれほどでもない事案の場合には、本案とともに判断されることもあります。
審理にあたっては、家庭裁判所調査官による調査が行われるのが一般的であり、子の監護状況や、子の意向等が調査されます。
また、子が15歳以上の場合には、子に対する陳述の録取が行われます。
保全処分は、審判を受けるものに告知されることによって効力が生じますので、告知後に強制執行を行うことが可能になります。
ただ、債権者に保全命令が送達されてから2週間を経過すると執行ができなくなります。
子の引渡しの強制執行としては、直接執行(執行官が子を強制的に引き渡す方法)の方法か、間接強制(引渡しをしない場合には、一定の金銭を支払わせる方法)の方法によることになります。