配偶者が別居しており生活費を支払ってくれないなどの場合、婚姻費用の分担請求をすることができます。
通常、配偶者が任意に婚姻費用を支払ってくれない場合に、通常婚姻費用の分担を求めるためには、調停や審判を申し立てることになります。
しかしながら、生活費の支払がないために、生活が困難になっているなどの事情がある場合には、調停や審判の結果を待っていては遅すぎるということもあります。
そこで、調停や審判の結論が出る前に、保全手続として、相手方の財産を保全することが考えられます。
婚姻費用分担の保全手続きとしては、婚姻費用の仮払いの仮処分を申し立てることになります(家事事件手続法157条1項2号)。
具体的には、「本案審判が効力を生ずるまで、月額〇円を仮に支払え」といった申立ての趣旨で申し立てることになります。
婚姻費用の仮払いの仮処分の管轄裁判所は、本案の調停又は審判が継続している家庭裁判所になります(家事105条1項)。
婚姻費用分担調停の管轄は相手方の住所地の家庭裁判所(火事事件手続法245条1項)、審判の管轄は夫婦いずれかの住所地の家庭裁判所になりますので(家事事件手続法150条)、仮処分の申立ても、夫婦いずれかの住所地の家庭裁判所になります。
婚姻費用の仮払いの仮処分の場合、婚姻費用の分担調停または審判が家庭裁判所に継続していることが要件になります(家事事件手続法157条)。
保全命令が認められるためには、以下を疎明する必要があります。
① 本案認容の蓋然性
② 保全の必要性があること
疎明とは、裁判官が一応確からしいという程度の心証を得ることをいい、本案訴訟における証明よりは低い程度で足りると考えられています。
保全の審理手続は、通常、書面審理と申立人の面接によって行われ、相手方には知られずに決定がなされるのが通常です。
保全処分の審判がなされると、裁判所から相手方に告知され、そのときから効力が生じます(家事事件手続法74条2項)。
保全処分の執行に関しては、民事保全法その他の法令に従うこととされています(家事事件手続法109条3項)。
婚姻費用の仮払いの仮処分の場合には、直接強制か間接強制が可能ですが、相手方の預金口座が分かっている場合には、預金口座への差押えを、勤務先が分かっている場合には、給与の差押えをすることが考えられます。