財産分与の対象になる財産は、離婚前に別居した場合は別居時、別居しなかった場合には離婚時の財産となるのが原則です。
それでは、婚姻期間中に、配偶者の一方が、本来は財産分与の対象になるはずだった財産を浪費や費消してしまった場合、財産分与の対象財産になる場合はあるのでしょうか。
以下では、いくつかの場合に分けて検討します。
夫婦の一方が、婚姻期間中に、ギャンブル、自身の趣味その他に浪費してしまう場合があり得ます。
このような場合、浪費せずに貯蓄等をしていれば、離婚時にも相応の財産が残っているはずであるとして、浪費した分も財産分与の対象に含めるべきだとの主張がなされる場合があります。
しかしながら、上述のとおり、財産分与の対象になるのは、別居時が原則であり、浪費により財産が残っていなかったという場合に、浪費した分を財産分与の対象と認められる可能性はほとんどないと思われます。
夫婦の一方が、婚姻期間中に両親や子どもに多額の金員を贈与してしまう場合があり得ます。
このような場合にも、財産分与の対象になるのは、別居時が原則であり、贈与した分を財産分与の対象と認められる可能性は乏しいと考えられます。
ただし、子どもに贈与した場合には、名義上子ども名義にしたのみで、真に贈与したとは言えない場合には、財産分与の対象になる可能性はありえます。
また、両親に贈与する場合にも、夫婦共有財産を減少させる目的で贈与した場合には、真に贈与したとはいえず、財産分与の対象になる可能性がありえます。
夫婦が不仲になった段階で、一方が、財産分与対象財産を隠匿してしまう場合がありえます。
たとえば、預金口座から預金を引き出してしまうなどがその例です。
通常、財産分与の対象財産となるのは、別居時であり、別居時に残存している資産を確定させることになります。
具体的には、預金であれば、別居時の通帳の残高をもって、財産分与の対象財産とします。
そうすると、上記のとおり、別居直前に預金口座から預金を引き出してしまった場合には、引き出した金員について、他の金融機関に保管しており、保管していたことが訴訟上明らかになれば、財産分与の対象財産になりますが、引き出した金員の行方が分からない場合には、財産分与の対象財産にはならないことになります。
このように、引き出した金員の行方が分からない場合には、引き出した財産は、財産分与の対象財産には含まれないのが原則ですが、引き出しが明らかに夫婦共有財産を減少させる目的でなされたもので、どこかに隠匿していることがうかがわれる場合には、財産分与の対象になる可能性もありえます。