財産分与の対象になる財産は、婚姻中に形成された財産であり、別居時に存在する財産ということになります。
そして、離婚裁判において、財産分与の対象の主張立証責任は、原則として、財産分与の対象財産があると主張する側ということになります。
したがって、財産分与の対象財産があると主張する側が、財産の存在を立証できなければ、その財産は財産分与の対象とは認められません。
しかし、夫婦とはいっても、配偶者の財産を把握していないこともあり、隠し財産があることもます。
このように隠し財産があると思われる場合、一方の配偶者としては、他方の配偶者の財産を把握するために、どのような方法があるのでしょうか。
離婚調停や離婚訴訟において、財産分与が問題となる場合、まずは財産分与を求める当事者に、財産分与の対象財産の一覧を提出させるのが通常です。
そして、提出された一覧について、相手方当事者に認否を求め、相手方当事者が認めたものは財産分与の対象財産になります。
一方、相手方当事者が争った場合には、主張する当事者がその存在を立証する必要があるということになります。
なお、一方当事者が財産分与を求めるものの、他方当事者の財産が全くまたはほぼ分からないという場合があります。
このような場合、裁判所は、他方当事者に任意開示を求めますが、任意開示に応じない場合には、対象財産は明らかにはなりません。
財産分与の対象財産か否かで最も争いになるのは、預貯金です。
不動産の場合には、婚姻時に秘密に購入したということが考えづらいですし、登記等により調査も可能なため、問題となることは少ないと言えます。
一方当事者が、他方当事者の預貯金を調査したいという場合、裁判上の調査嘱託が用いられることが通常です。
この他に、弁護士会照会の方法も考えられますが、他方当事者の口座の開示に関しては、他方当事者の同意が必要なことが多いため、実効性が低いと考えられます。
調査嘱託では、裁判所から、金融機関に対して、口座の有無や残額等の質問を行い、金融機関から回答がなされます。
これにより、他方配偶者の預貯金が明らかになることがあります。
ただし、調査嘱託は、個別の金融機関ごとに行う必要があります。
そして、一般的には、全ての金融機関や多くの金融機関に対して無差別的に調査嘱託を行う、といったことは認められていません。
他方配偶者が当該金融機関に口座を有していると疑われる場合に、調査嘱託が認められるのが通常です。
たとえば、自宅で金融機関からの郵便物を確認していたとか、他方配偶者の他の預金口座の履歴に、別の金融機関に対する振込の形跡がある、などといった場合が考えられます。