離婚協議中や離婚後すぐに、(元)配偶者が死亡してしまう場合がありえます。
離婚協議中に財産分与を争っていたり、離婚時に財産分与がなされていない場合、(元)配偶者の死亡後、相続人に対して財産分与を請求することができるでしょうか。
以下では、離婚後の場合と、離婚協議中の場合とに分けて検討します。
たとえば、夫と離婚した場合、離婚後は、夫の配偶者ではなくなるため、元妻には、相続分はありません。
したがって、本来であれば、元妻は、元夫の遺産からなにも受け取ることができないのが原則です。
一方、離婚時に、財産分与に関して取り決めていたのであれば、そもそも、離婚時において、夫の財産の一部を取得することができます。
それでは、離婚はしたものの、財産分与を行っていない場合、元妻は、夫の相続人に対して、財産分与の請求をすることができるのでしょうか。
この点については、財産分与の権利義務の内容は、当事者の協議、家庭裁判所の調停若しくは審判又は地方裁判所の判決をまって具体的に確定されるが、右権利義務そのものは、離婚の成立によって発生し、実体的権利義務として存在すると考えられており(最判昭和50年5月27日)、協議や審判、裁判等により離婚をしている場合には、財産分与請求権は相続されると考えられています。
そして、清算的財産分与や慰謝料、扶養的財産分与いずれについても、相互に関連しているため、包括的な権利として相続されると考えられています。
したがって、離婚後の場合には、元妻は、元夫の相続人に対して財産分与を請求することができると考えられます。
ただし、財産分与請求権は、2年が除斥期間であるため、2年を経過した後の場合には、相続人に対しても財産分与を請求することはできません。
たとえば、夫と離婚協議中に配偶者が死亡することがありえます。
この場合、妻には配偶者として相続分や遺留分がありますので、一定程度、夫の遺産を取得することが可能です。
ただし、夫が遺言を作成しており、妻への相続分が減らされている場合などには、財産分与を主張できるのであれば、そのほうが、夫の遺産をより多く取得することもできると考えられます。
このような場合、妻は、夫の相続人に対して、財産分与を請求することができるのでしょうか。
この点については、東京高決平成16年6月14日は、離婚が成立するより前に夫婦の一方が死亡した場合には、離婚が成立する余地はないから、財産分与請求権も発生することはないものである、と述べています。
したがって、離婚協議中の場合には、妻は、夫の相続人に対して財産分与を請求することはできないと考えられます。