夫婦が離婚するまでは、夫婦両者が子どもの親権者です。
しかしながら、離婚後は、夫婦のいずれかが親権者になります。
離婚後も両者ともに親権者になることは日本ではできません。
夫婦が協議離婚する場合には、夫婦の合意により親権者をどちらかに決めることができます。
一方、協議離婚できず、裁判で離婚する場合などには、裁判所がどちらが親権者なのかを決めることになります。
裁判所では、次のような判断基準で親権者を決めています。
親権者の決定は、子の利益及び福祉を基準として行われます。
具体的には、以下の諸事情を比較して総合的に判断されることになります。
父母側の事情:監護能力(年齢・性格・教養・健康状態)、精神的・経済的家庭環境(資産・収入・職業・住居・生活態度)、居住環境、教育環境、子に対する愛情の度合い、従来の監護状況、実家の資産、親族の援助等
子の側の事情:年齢、性別、心身の発育状況、環境への適応状況、環境の変化の適応性、子の意思、父母及び親族との情緒的結びつき
なお、不貞行為をしたかなど離婚の有責性はあまり考慮されません。
上記のとおり、考慮要素は多数ありますが、概して、同居時及び別居後に監護している親が同じで、現在の監護状況に特段の問題がない場合には、その監護親が親権者になることが多いといえます。
一方、同居時と現在とで監護親が異なる場合や、兄弟がそれぞれ別の親に監護されている場合、現在の監護状況に問題があるような場合などは、判断が難しいこともあります。
乳幼児については特段の事情がない限り、母親の監護養育に委ねることが子の福祉に合致するという考え方を母親優先の原則といいます。
現在でも、乳幼児の場合には母親が親権者と指定されることがほとんどです。
ただ、単純に母親が優先されているというよりは、子どもと最も時間的なかかわりが多く、夫婦のうちどちらとより緊密な関係か、という点で判断されているともいえます。
それが母親であることが多いため、母親が親権者と指定されることが多いともいえます。
親権者を指定するにあたって、子どもの意思も尊重されます。
15歳以上の子供の場合には、裁判所では必ず子どもの意思を確認しますが、それ以下の年齢の場合でも、10歳以上であれば、調査官により子の意思の確認がなされるのが通常です。
10歳以上の子の場合には、離婚後の親権者について、子の意思が尊重されることが多いといえます。
一方、10歳未満の場合には、子の能力にもよりますが、子の意思表明能力が不十分だということで、子の発言が尊重されないこともあります。
兄弟がともに幼児期の場合、兄弟の親権者は同一になることが通常です。