近年、土地の所有者が死亡しても相続登記がされないこと等を原因として、不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず、又は判明しても連絡がつかない土地(所有者不明土地)が生じ、その土地の利用等が阻害されるなどの問題が生じています。
この問題について、現在、法制審議会おいて民法及び不動産登記法の改正として議論がなされています。
2020年秋の臨時国会での、民法や不動産登記法の改正案の提出を目指して進められています。
報道でも、相続登記の義務化や違反時の罰則検討などが伝えられています。
土地相続登記を義務化へ 罰則検討、手続きは簡素に :日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52601700V21C19A1PP1000/
以下では、より詳しく、相続登記に関する法制審議会(民法・不動産登記法部会)の具体的な議論内容をご紹介します。
法務省:法制審議会-民法・不動産登記法部会
http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00302.html
現状の登記制度では、登記名義人が死亡した場合でも、相続人から請求がない限り、登記名義は変りません。
一方、相続人が相続登記をすることも義務付けられておらず、相続人に相続登記をするインセンティブもありません。
また、相続登記をするには、被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得しなければならなかったり、手続き自体も煩雑です。
それゆえ、相続人が相続登記をしないままということがあります。
そうすると、登記名義が亡くなった人のままとなり、さらにそのまま放置しておくと、その後に複数の相続などが生じて、結局誰のものか良く分からないということになってしまうということもあります。
法制審議会では、以下のような改正が検討されています。
登記所が他の公的機関から登記名義人の死亡情報を取得するため、次のような仕組みを設ける。
① 登記名義人は、登記官に対し、自己が所有権の登記名義人となっている不動産について、氏名、住所及び生年月日等の情報を申し出る。
② 登記官は、申出のあった情報を検索キーとして、連携先システム(戸籍副本データ管理システムや住民基本台帳ネットワークシステム等)に定期的に照会を行うなどして登記名義人の死亡の事実を把握する。
登記官は、連携先システムを通じて登記名義人が死亡したことが判明したときは、当該登記名義人の最後の住所宛てに相続登記を促す旨の通知を送付するか、相続開始の事実を登記記録上に公示する。
登記名義人が死亡した場合に、当該不動産を相続や遺言により取得した相続人に対して、当該不動産の取得の事実を知った日から一定の期間内に相続登記をすることを義務付ける。
相続登記申請義務違反の場合、一定の額の過料に処する。
遺産分割が未了の間の登記について、その申請手続を簡略化する方策として、例えば、法定相続人の氏名及び住所を記録し、持分を記録しない登記を創設した上で、法定相続人の一人は、登記官に対して、対象となる不動産の登記名義人について相続が開始したこと、及び当該登記名義人の法定相続人の一人であることを申し出れば、被相続人の戸除籍謄本等の添付情報の全部又は一部を提供することなく、当該登記を受けることができる。
所定の期間内に登記申請義務を履行した者に対して登録免許税を優遇するなどの利益を付与する。
相続人が受遺者である遺贈による所有権の移転の登記手続を簡略化するため、登記権利者が単独で申請することができる。
法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続を簡略化するため、法定相続分での相続登記がされている場合に、遺産分割協議・調停・審判、遺言による更正登記をする際には、登記権利者が単独で申請することができるものとする。
相続人による相続登記の申請を促進する観点も踏まえ、以下のような所有不動産目録証明制度を創設する。
① 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自己が登記名義人である不動産の目録(不動産目録証明書)の交付を請求することができる。
② 登記名義人について相続があった場合において、相続人は、登記官に対し、手数料を納付して、不動産目録証明書の交付を請求することができる。