自分の両親が、自分には知らないうちに誰かと養子縁組をすることがありえます。
たとえば、自分にはもともと自分と兄がいたところ、兄家族と同居していたことから、兄の妻や子を養子とした、などということがありえます。
自分自身に子がいる場合には、兄弟姉妹ではなく、子が相続人になるため、特に問題となることはありませんが、子がおらず、兄弟姉妹が法定相続人になる場合には、養子も相続分を有することになるのでしょうか。
民法727条は、「養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。」と定めています。
したがって、養子と養親の子との間には、血族間におけるのと同一の親族関係が生じることになりますので、兄弟姉妹が法定相続人になる場合には、養子も法定相続分を有することになります。
たとえば、自分にはもともと自分と兄がおり、両親が兄の子を養子とした場合において、自分には配偶者も子もいないとすると、法定相続分は、兄と兄の子が2分の1ずつということになります。
たとえば、母親の死亡後、父親のみが、兄の子と養子縁組をするということがありえます。
片親のみが養子縁組をしたということになりますが、この場合、兄の子は、半血兄弟とみなされると考えられています。
半血兄弟の場合には、法定相続分は、全血兄弟の2分の1になりますので(民法900条4号)、上記の例の場合、兄が3分の2、兄の子が3分の1になります。
たとえば、両親が兄の子を養子縁組し、その後両親も兄も死亡し、その後自身が死亡するという場合がありえます。
この場合、自分の法定相続人は兄の子になります。
兄の子1人が相続人であれば、いずれにせよ兄の子がすべてを相続するので、特段問題ないのですが、兄の他に、自分に妹がいた場合の相続分はどうなるのでしょうか。
ここで問題なのは、兄の子は、兄の代襲相続人としての地位の他、自分が両親の養子であるという地位も有しているということです。
この点について、明確な答えはないようですが、孫を養子としている場合に、子が先に死亡しているときには、親の相続に関して、孫は、養子としての相続分と子の代襲相続人としての相続分の両方を取得するというのが、戸籍先例(S26.9.18民事局長回答)であり、これと同様に考えるということもありえるものと思います。
この戸籍先例と同様に考えた場合には、兄の子は、兄の代襲相続人としての法定相続分(3分の1)と、両親の養子としての法定相続分(3分の1)の両方を取得することになるため、合計3分の2の法定相続分を取得することになると考えられます。一方の妹は、3分の1の法定相続分ということになります。
自分の法定相続人が兄弟姉妹の場合で、養子に自身の遺産を相続させることを希望しない場合には、遺言を書いておく必要があるでしょう。
兄弟姉妹には、遺留分はないため、遺言を書いておけば、自身の希望したとおりに遺産を遺贈することが可能になります。