現行民法では、相続人が複数いる場合には、相続の開始により相続財産は相続人の共有になりますが(第898条)、この遺産共有関係は、その後、遺産分割により解消されることが想定されています(第906条以下)。
この想定のとおり遺産分割がされ、その旨の登記がされれば、所有者不明土地は発生しません。
しかし、 実際には遺産分割がされず、被相続人名義のまま、土地が放置されるこ とも少なくありません。
現行民法が、遺産分割をすることができる期間に制限を設けておらず、遺産分割をしないで放置することが可能とされていることも原因の一つとなっていると考えられています。
そこで、法制審議会では、所有者不明土地の問題の解決のため、遺産分割に関する法律の改正も議論されています。
以下では、遺産分割の法改正に関する法制審議会(民法・不動産登記法部会)の具体的な議論内容をご紹介します。
法務省:法制審議会-民法・不動産登記法部会
http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00302.html
なお、相続登記の改正に関する議論に関しては、以下をご覧ください。
遺産分割の合意又は遺産分割手続(調停及び審判)の 申立てについて期間の制限を設けることが検討されている。
遺産分割手続の申立て等がされないまま長期間が経過した場合における遺産を合理的に分割することを可能とするため、次のような規定を設けることが検討されている。
共同相続人は、遺産分割の合意及び遺産分割手続(調停及び審判)の申立てがないまま相続開始時から10年を経過したときは、共同相続人は、具体的相続分の主張(具 特別受益及び寄与分等の主張)をすることができない。
相続開始時から10年経過後は、遺産分割は、各相続人の法定相続分の割合に応じて、遺産分割手続(調停及び審判)または、特定の財産ごとに共有物分割(準共有物分割)の手続により行う。
① 相続開始時から10年経過後、相続人の一部が不明であるときは、他の相続人は、不明相続人の持分に関し売渡請求権等の方法をとることができる。
② 遺産共有持分と通常の共有持分が併存しているところ、相続開始時から10年が経過した場合において、相続人の一部が不明であるときは、通常共有持分の共有者は、不明相続人の遺産共有持分に関し、売渡請求権等の方法をとることができる。