コラム

所有者不明土地の放棄に関する法改正の動き

所有者不明土地の放棄に関する法改正の動き

人口減少により土地の需要が縮小しつつあり、価値が下落する土地が増加する傾向にある状況においては、将来にわたって、土地への関心が失われ、適切に管理されなくなる土地が増加することが予想されます。
このような土地は、特に土地所有者について相続が発生したときには、遺産共有状態になったり相続の放棄がされたりすることもあってより放置されがちであり、相続登記がされないおそれも相対的に高いことから、所有者不明土地のいわば予備軍となると考えられます。
そこで、法制審議会では、現在適切に管理されている土地が将来管理不全状態となることを防ぐとともに、 相続による所有者不明土地の発生を抑制するために、土地の所有者が土地を手放し、管理能力のある公的機関に帰属させる仕組みとして、土地所有権の放棄を可能とする制度を創設することが検討されています。

以下では、所有者不明土地の放棄に関する法制審議会(民法・不動産登記法部会)の具体的な議論内容をご紹介します。

法務省:法制審議会-民法・不動産登記法部会
http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00302.html

なお、相続登記の改正に関する議論に関しては、以下をご覧ください。

相続登記の義務付けなどの法改正の動き

土地所有権の放棄を認める制度の創設

土地の所有者は、法律で定めるところによりその所有権を放棄し、土地を所有者のないものとすることができる。
なお、所有権を放棄した場合、当該不動産は国庫帰属となる(民法239条2項)。

土地所有権の放棄の要件及び手続

土地の所有者は、次に掲げるような要件を全て満たすときは、土地の所有権を放棄することができる。
① 土地の権利の帰属に争いがなく筆界が特定されていること。
② 土地について第三者の使用収益権や担保権が設定されておらず、所有者以外に土地を占有する者がいないこと。
③ 現状のままで土地を管理することが容易な状態であること。
④ 土地所有者が審査手数料及び土地の管理に係る一定の費用を負担すること。
⑤ 土地所有者が、相当な努力が払われたと認められる方法により土地の譲渡等をしようとしてもなお譲渡等をすることができないこと。

①及び②について

所有権が放棄された土地を国に帰属させることとした場合に、近隣の土地所有者や土地に関して権利を主張する者、土地を占有する者との間で土地の管理をめぐって紛争が生じると、国、ひいては国民が紛争の解決に向けてコストを負担しなければならなくなる。また、他者との間で紛争状態に陥っている土地の所有権の放棄を認めると、 所有者をして紛争を放置してその負担から逃れることを許すことになり、モラルハザードにもつながりかねない。
そのため、上記①及び②の要件を設けるものとされている。

③について

国のコスト負担を軽減させるとともに、放棄を見越して土地の管理を 怠るモラルハザードを防止するため、上記③の要件を設けるものとされている。

④について

国が負担するコストが軽減されると同時に、土地の所 有権放棄に一定の費用が必要になることで、安易な所有権放棄ができなくなり、モラルハザードの防止につながる面もあると考えられる。そのため上記④の要件を設けるものとされている。

⑤について

土地所有権の放棄を認めて土地を国に帰属させることは、土地の管理コストを国、ひいては国民に負担させることになるから、いわば最後の手段とすべきであり、そのため上記⑤の要件を設けるものとされている。

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