コラム

遺留分の時効

遺留分侵害額請求権の消滅時効

遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効により消滅します(民法1048条前段)。

時効起算点

相続の開始を知っただけではなく、遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時からなので、被相続人の死亡だけではなく、遺言や生前贈与を知った時から時効期間が開始します。

また、相続の開始と遺留分を侵害する贈与又は遺贈のあったことを知っただけではなく、贈与や遺贈が遺留分額を侵害することを知ることが必要です(最判昭和57年11月12日)。
そして、贈与の無効を主張している場合であっても、被相続人の財産のほとんど全部が贈与されていて遺留分権利者がこの事実を認識しているときには、贈与が無効であるとの主張について、一応、事実上及び法律上の根拠があって、遺留分権利者が無効を信じているため遺留分減殺請求権を行使しなかったことがもっともと首肯しうる特段の事情が認められなければ、贈与が遺留分額を侵害することを知っていたものと推認されるとされています。

消滅時効の対象

1年の消滅時効は、形成権としての遺留分侵害額請求権そのものです。
遺留分侵害額請求の意思表示をした結果として生じる金銭給付請求権は、1048条前段の期間制限に服しません。
したがって、一度遺留分侵害額請求権を行使すれば、その後は金銭給付請求権としての消滅時効期間を考える必要があります。

時効の停止

時効の期間の満了前6箇月以内の間に成年被後見人に法定代理人がないときは、法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その成年被後見人に対して、時効は完成しません(民法158条)。

また、後見開始の審判を受けていなくても、時効の期間の満了前に後見開始の申立てがなされ、その後に後見開始の審判がされたときは、民法158条1項の類推適用により、法定代理人が就職した時から6か月を経過するまでの間は、その者に対して時効は完成しません(最判平成26年3月14日)

遺留分侵害額請求権の除斥期間

遺留分侵害額請求権は、相続開始時から10年を経過すれば消滅します(民法1048条後段)。
これは除斥期間なので、仮に遺留分権利者が被相続人の死亡や、遺贈等の存在を知らなくても、遺留分侵害額請求権は消滅します。

除斥期間経過後における遺留分侵害額請求権の行使

改正前の民法1042条後段の適用について、民法160条の法意に照らし、遺留分権利者が遺留分減殺請求権を行使することを期待することができない特段の事情が解消された時点から6か月内に同権利を行使したと認められる場合には、民法1042条後段による遺留分減殺請求権消滅の効果は生じないものと解するのが相当であるとした裁判例があります(仙台高判平成27年9月16日)。
改正後の遺留分侵害額請求権の行使においても同じように考えられます。

仙台高判平成27年9月16日

事案の概要

松夫は、太郎死亡後、本件遺言の存在を示しつつも、「開封されているので無効である、その結論は司法書士に相談した結果である」旨述べ、これを執行しないことを前提として相続人間で遺産分割協議を行うことを提案し、遺産分割協議案を提示していた。他の相続人は、松夫の話を信じて、本件遺言は無効であると理解し、遺産分割協議で太郎の相続問題を処理することに同意して協議を行っていた。ところが、平成二三年一〇月三〇日、松夫は、それまでの説明を一変させ、本件遺言は有効であるから、これを執行すると述べ、本件遺言の検認を申立て、平成二四年二月九日、検認が行われた。そこで、控訴人は、同年六月二七日に遺留分減殺請求行使の意思表示をした。

判旨

本件は、本件遺言に係る遺言としての権利主張が、相続開始の時から一〇年以上を経過した後になって行われており、その点において、既に法律関係の速やかな確定の要請に背反する事態が生じている事案である。さらに、本件遺言は、相続開始の時から約一年六か月後の時点で、その存在は明らかになっていたものの、同時に、遺言としての有効性について、無効であるとの見解が、具体的な理由付けを含めて専門家の見解として紹介され、控訴人を含む相続人全員が、これを信じて、以後、無効を前提として遺産分割協議が継続されていたという事情がある。そして、このような事情からすれば、上記見解が誤ったものであったことを踏まえても、控訴人において、相続開始の時から一〇年間にわたり、有効な遺言が存在することを認識し得ず、その結果、遺留分減殺請求権を行使することを期待できない特段の事情があったと認めるのが相当である。以上のような事情の下で、相続開始後、受遺者による相続開始の時から一〇年間経過後の新たな権利主張が容認される一方で、これに対する遺留分減殺請求権の行使は一切許されないと解するのは、公平の見地から相当とはいえない。したがって、本件においては、民法一〇四二条後段の適用については、同法一六〇条の法意に照らし、遺留分権利者である控訴人が、上記特段の事情が解消された時点から六か月以内に同権利を行使したと認められる場合には、控訴人について、同法一〇四二条後段による遺留分減殺請求権消滅の効果は生じないものと解するのが相当である。

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