被相続人の事業に関し労務を提供する場合の寄与分です。
家業である農業、林業、漁業のほか、各種の製造業、加工業、小売業、医師、公認会計士、税理士等に従事することによって寄与が認められる場合があります。
家事従事型の寄与分が認められる要件は次のとおりです。
配偶者が協力して農業や自営業を行っている場合には、配偶者の協力扶助義務を超えていると考えられ、寄与分は認められます。
生活費などを受領している場合、世間並みの給与と同額を受け取っている場合には寄与分を認めることはできませんが、
世間一般並みの労務報酬に比べて著しく少額である場合には、無償性の要件を満たすものと考えられます。
労務の提供が一定以上の期間に及んでいることが必要です。
おおむね3、4年程度を要すると考えられています。
労務内容が片手間なものではなく、かなりの負担を要するものであることが必要です。
ただし、他の業務に従事しているからといって、直ちにこの要件が否定されるものではありません。
被相続人の営む会社への労務提供は、あくまでも会社に対する貢献であり、「被相続人の事業に関する労務の提供」にはあたらないため、基本的に寄与分は認められません。
ただし、会社とは名ばかりであって、実質的には被相続人の「個人企業」に近く、被相続人と経済的に極めて密着した関係にあり、かつ、会社への貢献と被相続人の資産の確保との間に明確な関連性があり、会社への労務提供に対して賃金などの対価が支払われていない場合には、寄与分が認められる可能性があります(高松家丸亀支審平成3年11月19日)。
通常は、寄与相続人が得られたであろう給付額から生活費相当額を控除し、それに寄与の期間を乗じて算出します。
通常得られたであろう給付額は、家業と同種同規模の事業に従事する同年齢層の者の年間給与額を基準として、賃金センサス等を参考にすることが多いといえます。
生活費相当額は、実額が判明すればそれによりますが、そうでない場合には、裁判所の裁量によって決められます。
被相続人と寄与相続人が共に長期にわたって農業に従事してきたような場合には、寄与相続人の報酬から算出するのではなく、相続財産の形成に実際に貢献したと思われる比率をもって評価することもあります。