コラム

相続と投資信託

一部の相続人による解約請求はできないのが原則

複数の法定相続人がいる場合、遺産分割が完了する前に、一部の法定相続人が金融機関に対して行う投資信託の解約請求は認められません。

投資信託の仕組み

金融機関が取り扱う投資信託は、通常、金融機関が販売会社であり、投資信託の設定・運用は運用会社が行い、運用会社からの指図に従って、信託銀行が有価証券の売買や管理を行うというものです。
顧客には、投資信託の受益権を販売し、金融機関は顧客の受益権を保護預かりします。
なお、投資信託及び投資法人に関する法律では、投資信託は、委託者指図型投資信託と委託者非指図型投資信託とに区別されていますが、現在、委託者非指図型投資信託はほとんど利用がありません。
顧客が機関途中で投資信託の現金化を希望する場合、解約か買取の方法があります。買取は販売会社である金融機関において投資信託の受益権を買い取るという方法であり、解約は運用会社をとおして信託財産の一部から換金する方法です。

一部の相続人では投資信託の解約・買取請求はできない

被相続人の投資信託の受益権について相続が生じた場合、遺産分割の対象となります(最判平成26年2月25日)。
そして、投資信託の受益権は共同相続人の準共有になるため、その解約は、相続人全員によらなければなりません。
したがって、一部の相続人からの解約・買取請求は、適法な権利行使とは言えないため認められません。
これは、法定相続人の1人が、投資信託の全てについて解約・買取請求ができないというだけではなく、投資信託の法定相続分相当分についても一部解約・買取請求ができないということです。

投資信託の解約・買取請求が認められるのは、相続人全員の合意がある場合、遺言がある場合、遺産分割審判がなされた場合などに限られます。
相続人全員の合意がある場合とは、典型的には、相続人全員による遺産分割協議書の提出がなされる場合や、相続人全員による相続手続書類の提出がなされる場合です。

いずれの投資信託についても同様の取り扱いとなる

現在販売されている投資信託としては、委託者指図型の投資信託(ETF、MRF、MMFなどを含む)や外国投資信託がありますが、いずれについても上記と同様の取り扱いであり、一部の相続人のからの解約・買取請求はできないと考えられます。

一部の相続人に対して解約・買取がされた場合の金融機関の責任

投資信託の解約が認められないにも関わらず、金融機関が、一部の相続人からの解約・買取請求に応じて、一部の相続人に対して解約・買取を行った場合、原則として金融機関は責任を免れられません。
不適法な権利行使による解約・買取であり、解約・買取は無効であると考えられます。
したがって、一部の相続人に対して解約・買取がなされた後であっても、他の相続人としては、金融機関に対して損害賠償請求ができる可能性があります。

参考判例

最判平成26年2月25日
共同相続された上記投資信託受益権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。

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