相続放棄とは、相続人が相続開始による包括承継の効果を消滅させる意思表示をいいます。
相続放棄をすると、放棄した相続人は、その相続に関しては最初から相続人にならなかったものと扱われます(民法939条)。
相続放棄をする場合、放棄を希望する相続人は、被相続人の最後の住所地にある家庭裁判所に対して、自己のために相続が開始したことを知ったときから3か月以内に、相続放棄の申述を行う必要があります(民法915条1項)。
家庭裁判所が相続放棄の申述を受理した場合、申述人は、相続放棄申述受理証明書の交付を受けることができます。
相続放棄をする理由は、資産より債務が超過している場合が代表例ですが、それ以外にも、被相続人から生前贈与を受けていた場合や、相続人同士で関わり合いを持ちたくない場合など、様々です。
相続人が相続放棄をする前に相続預金を引き出した場合には、民法921条1号の「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。」に該当し、単純承認とみなされる可能性があります。
この場合、相続放棄をすることができなくなるため注意が必要です。
相続預金の払戻に際して、一部の相続人が相続放棄をしている場合には、相続放棄をした相続人に関して、相続放棄受理証明書を提出する必要があります。
上述のとおり、相続放棄をすると、最初から相続人にならなかったものと扱われますので、相続放棄をした相続人以外の相続人全員による遺産分割協議書を締結し、提出する必要があります。
たとえば、被相続人Aが死亡し、相続人が妻Bと子C、子Dの場合で、子Dが相続放棄をしたケースを考えると、以下の書類を提出する必要があります。
相続放棄により、法定相続人が変わる場合があるので、注意が必要です。
たとえば、被相続人Aが死亡し、相続人が妻Bと子Cの場合で、子Cが相続放棄をしたケースを考えます。
この場合、子Cの相続放棄により、第一順位である子の相続人はいなくなります。仮に子Cの子(被相続人の孫)としてDがいる場合にも、相続放棄によって代襲相続は生じませんので、Dは相続人にはなりません。
第一順位である子の相続人がいなくなると、次は第二順位の親がいるかを確認する必要があり、第二順位である直系尊属(親など)がいなければ、第三順位である兄弟姉妹がいるかを確認する必要があります。
このように、相続放棄をすることにより、当初と法定相続人が異なってくる可能性があります。
法定相続人が変わる場合には、当然、新たに法定相続人になった者の戸籍謄本や、その者との間での遺産分割協議書が必要になります。
たとえば、上記のケースで、被相続人の直系尊属はすでに死亡しているものの、弟としてEがいる場合、以下の書類を提出する必要があります。