コラム

相続財産管理人による預金の払戻し

相続財産管理人について

被相続人に相続人がいる場合、相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継しますが(民法896条)、相続人がいない場合や、相続人であった者全員が相続放棄をした場合、相続人不存在となり、相続財産を管理する者がいなくなります。
このような場合、相続財産管理人が選任されると、相続財産管理人が、相続財産の管理や清算を行い、最終的には相続財産は国庫に帰属されることになります。

相続財産管理人の職務

相続財産管理人は、利害関係人等が家庭裁判所に申し立てることによって選任されます(民法952条)。相続財産管理人が選任されるのは、相続債権者がいて債権回収や担保権実行をする必要がある場合や、特別縁故者が相続財産分与の申立てをしようとする場合などがあります。

相続財産管理人は、選任後、相続財産を調査し、財産目録を作成します(民法953条、27条1項)。

相続財産管理人が選任されると、家庭裁判所より公告がなされますが、公告から2か月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、すべての相続債権者及び受遺者に対し、2か月以内に請求の申出をすべき旨を官報公告する必要があります(民法957条)。

一方、相続債権者としては、公告期間内に請求の申し出をする必要があります。請求の申し出をしなかった場合、残余財産についてしか権利を行使することができなくなり、申し出をした債権者より劣後してしまいます(民法933条)。

公告期間満了後、相続財産管理人は、その期間内に請求の申し出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をする必要があります(民法957条2項、929条)。
そして、相続債権者に弁済した後、受遺者に弁済を行います(民法957条、931条)。

相続財産管理人は、請求申出の公告期間満了後、6か月以上の催告期間を定め、相続人捜索の公告手続を行います。相続人捜索の公告期間内に相続権を主張する者がなければ、相続人不存在が確定し、相続人並びに相続財産管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者はその権利を行使することができなくなります(民法958条の2)。

相続人捜索の公告による催告期間満了後3カ月以内に被相続人と特別の縁故があったと主張する者は、家庭裁判所に対し、相続財産の全部または一部の分与を求める申立てをすることができます(民法958条の3)。

以上を経てもなお残余財産がある場合、相続財産管理人は、残余財産を国庫に引き継ぐことになります(民法959条)。

預金の払戻について

上述のとおり、相続人がいない場合に、相続財産管理人が選任されることがあります。そして、相続財産管理人は、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な一切の権限を有しますので、相続預金の払戻も可能です。

相続財産管理人が権限外行為を行う場合には、家庭裁判所の許可審判が必要になりますが、預金口座の解約は、権限内行為と考えられます(片岡武他編『第2版 家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務』357頁)。

したがって、相続財産管理人は家庭裁判所の権限外許可審判がなくとも、預金の払戻し請求ができると考えられます。

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