コラム

名義預金の遺産分割

名義預金について

被相続人の預金が名義預金である場合がありえます。
この点、出捐者をもって、預金者と考えるのが判例の考え方といえます(記名式定期預金について最判昭和57年3月30日金法992号38頁)。

したがって、預金名義が被相続人であっても、当該預金の出捐者が一部の相続人である場合には、当該相続人が預金者ということになります。そうすると、当該相続人が、相続預金の払戻をすることができるということになります。

遺産分割について

預金の出捐者が一部の相続人である場合には、当該相続人が預金者ですので、当該預金は遺産分割の対象にはなりません。

相続人間で出捐者が誰かに関して意見の相違がある場合には、別途遺産確認請求訴訟や自己の預金であることの確認請求訴訟を提起する必要があるでしょう。また、後述のとおり直接に金融機関に対し払戻請求訴訟を提起することも考えられます。

なお、通常は被相続人名義の預金であれば、これを争う者がいたとしても、審判においても遺産分割の対象として取り扱われることが多いと思われます。したがって、相続預金ではないと主張する相続人自らが自己の預金であることの確認請求訴訟や払戻請求訴訟を提起する必要があると考えられます。

預金の払戻について

通常の相続預金であれば、相続人全員からの請求によって払い戻す必要があるのに対し、名義預金の場合、出捐者からの請求に応じる必要があります。
しかしながら、実際問題として、金融機関が、直ちに預金名義人以外の者を預金者であると認めてくれることは、難しいことが多いと思われます。

訴訟提起

そこで、このような場合には、相続人間において預金の帰属に関する訴訟を提起し、判決結果が出た後に、金融機関に対して払戻し請求をすべきと考えられます。

訴訟における留意点

 名義預金に関する預金の帰属をめぐる訴訟では、以下の点が重要と思われます。

原資について

出捐者であると主張する相続人のどのような資産から当該相続預金が形成されたのか、すなわち、当該相続預金の原資は何であったのかを確認する必要があります。
たとえば、出捐者であると主張する相続人の預金口座から出金がなされたのと同日に、相続預金の口座が開設され、同額の入金があるなどという場合には、相続人が原資を出捐した可能性が高いといえます。

口座開設時・入金時の状況

可能であれば、過去の口座開設時の状況を確認するとともに、口座開設届の筆跡や印影を確認します。また、他人名義の預金口座を開設した理由を確認します。

口座の利用状況

 口座の利用状況を確認し、被相続人が利用していた形跡はあるか、出捐者であると主張する相続人が利用していたかなどを確認します。また、途中で一部払戻などをしている場合には、払戻伝票などの確認を行います。

他の相続人の意向確認

他の相続人に対し、相続預金が被相続人の預金ではなく、出捐者であると主張する相続人が出捐した預金であるかなどの確認を行います。

関連記事

遺留分に関する期限の許与

遺留分に関する期限の許与 遺留分権利者が遺留分侵害額請求をしても、金銭請求を受けた受遺者・受贈者が直ちには金銭を準備することができないことがあります。 このような場合、裁判上、金銭債務の全部又は一部...

相続放棄(民法915条)とは

相続放棄(民法915条)とは 相続放棄とは、相続人ではなくなったものとみなされる制度をいいます。 遺産が債務超過である場合や、相続人が遺産の取得を希望しない場合などに用いられます。 似た制度として相続分...

遺産分割における株式の評価

上場株式の評価 上場株式の評価は、東京証券取引所等で公表されている株価に基づいて評価を行います。 いつの株価を基準にするかについては、原則として、遺産分割時となりますが、被相続人の死亡から遺産分割ま...

遺産分割における不動産の評価

不動産の評価 遺産分割において、不動産の評価額が問題となることは多いです。 不動産の持分を、法定相続分など割合で分けるのであれば、評価額は問題となりませんが、不動産を相続人の一部が取得し、別の相続人...

寄与分とは

寄与分とは 寄与分とは、共同相続人中に、被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした者があるときに、相続財産からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続分を算定し、その算定された相続分...

養子も兄弟としての相続分を有するか

養子の兄弟 自分の両親が、自分には知らないうちに誰かと養子縁組をすることがありえます。 たとえば、自分にはもともと自分と兄がいたところ、兄家族と同居していたことから、兄の妻や子を養子とした、などとい...

ご相談をご希望の方はお電話またはメールにてご連絡ください

お電話でのお問い合わせ

046-204-7414

受付時間

平日9:00〜21:00

土日9:00〜19:00

メールでのお問い合わせ

お問い合わせ

通常1営業日以内にご返答させていただきます。