コラム

送付嘱託による取引履歴の開示請求

送付嘱託による取引履歴の開示請求

被相続人の取引履歴の開示請求を、裁判所の送付嘱託により行うことがありえます。
特に、金融機関が任意の開示に応じてくれない場合、裁判所の送付嘱託を利用することがあります。
裁判所の送付嘱託により取引履歴の開示請求を行った場合、認められるでしょうか。

文書送付嘱託への回答義務について

民事訴訟では、裁判の証拠として必要な文書を第三者が所持している場合には、文書の所持者に対して、その文書を裁判所に送付(提出)するよう求めることができます(民事訴訟法第226条)。これを文書送付嘱託といいます。
裁判所は、訴訟当事者の申立てを受けて、真実発見などのためその文書を証拠とすることが必要であると判断したものについて、送付嘱託を行います。
したがって、訴訟の争点との関連性の低い文書や、そもそも関連性の認められない文書について、たとえ当事者が送付嘱託の申立てを行ったとしても、送付嘱託は認められません。
文書送付嘱託は、正当な理由がない限り、嘱託先は回答義務を負うと解されています。しかしながら、文書を所持する第三者に対し、あくまでも任意の提出を要請する制度であり、強制力はありません。

取引履歴の開示請求の可否

文書送付嘱託により、金融機関に取引履歴の開示請求を行った場合、相続人に実体法上の権利があれば金融機関もこれに応じることが多いといえます。

実体法上の権利について詳しくは以下をご覧ください。
取引履歴の開示請求

ただし、裁判所が文書送付嘱託を採用するかという問題があり、必要性がない場合には、裁判所はこれを認めないことが多いといえます。
具体的には、被相続人の口座から特定の相続人が不正に出金したことを調査するため、特定の相続人の預金口座に関する取引履歴の送付嘱託を申し立てる場合、被相続人の口座からの出金が不正出金であることについて、相応の蓋然性が認められる場合でなければ、採用されないことが多いといえます。

関連記事

遺留分に関する期限の許与

遺留分に関する期限の許与 遺留分権利者が遺留分侵害額請求をしても、金銭請求を受けた受遺者・受贈者が直ちには金銭を準備することができないことがあります。 このような場合、裁判上、金銭債務の全部又は一部...

相続放棄(民法915条)とは

相続放棄(民法915条)とは 相続放棄とは、相続人ではなくなったものとみなされる制度をいいます。 遺産が債務超過である場合や、相続人が遺産の取得を希望しない場合などに用いられます。 似た制度として相続分...

遺産分割における株式の評価

上場株式の評価 上場株式の評価は、東京証券取引所等で公表されている株価に基づいて評価を行います。 いつの株価を基準にするかについては、原則として、遺産分割時となりますが、被相続人の死亡から遺産分割ま...

遺産分割における不動産の評価

不動産の評価 遺産分割において、不動産の評価額が問題となることは多いです。 不動産の持分を、法定相続分など割合で分けるのであれば、評価額は問題となりませんが、不動産を相続人の一部が取得し、別の相続人...

寄与分とは

寄与分とは 寄与分とは、共同相続人中に、被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした者があるときに、相続財産からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続分を算定し、その算定された相続分...

養子も兄弟としての相続分を有するか

養子の兄弟 自分の両親が、自分には知らないうちに誰かと養子縁組をすることがありえます。 たとえば、自分にはもともと自分と兄がいたところ、兄家族と同居していたことから、兄の妻や子を養子とした、などとい...

ご相談をご希望の方はお電話またはメールにてご連絡ください

お電話でのお問い合わせ

046-204-7414

受付時間

平日9:00〜21:00

土日9:00〜19:00

メールでのお問い合わせ

お問い合わせ

通常1営業日以内にご返答させていただきます。