被相続人の取引履歴の開示請求を、裁判所の送付嘱託により行うことがありえます。
特に、金融機関が任意の開示に応じてくれない場合、裁判所の送付嘱託を利用することがあります。
裁判所の送付嘱託により取引履歴の開示請求を行った場合、認められるでしょうか。
民事訴訟では、裁判の証拠として必要な文書を第三者が所持している場合には、文書の所持者に対して、その文書を裁判所に送付(提出)するよう求めることができます(民事訴訟法第226条)。これを文書送付嘱託といいます。
裁判所は、訴訟当事者の申立てを受けて、真実発見などのためその文書を証拠とすることが必要であると判断したものについて、送付嘱託を行います。
したがって、訴訟の争点との関連性の低い文書や、そもそも関連性の認められない文書について、たとえ当事者が送付嘱託の申立てを行ったとしても、送付嘱託は認められません。
文書送付嘱託は、正当な理由がない限り、嘱託先は回答義務を負うと解されています。しかしながら、文書を所持する第三者に対し、あくまでも任意の提出を要請する制度であり、強制力はありません。
文書送付嘱託により、金融機関に取引履歴の開示請求を行った場合、相続人に実体法上の権利があれば金融機関もこれに応じることが多いといえます。
実体法上の権利について詳しくは以下をご覧ください。
取引履歴の開示請求
ただし、裁判所が文書送付嘱託を採用するかという問題があり、必要性がない場合には、裁判所はこれを認めないことが多いといえます。
具体的には、被相続人の口座から特定の相続人が不正に出金したことを調査するため、特定の相続人の預金口座に関する取引履歴の送付嘱託を申し立てる場合、被相続人の口座からの出金が不正出金であることについて、相応の蓋然性が認められる場合でなければ、採用されないことが多いといえます。